「洋食屋さん」と聞くとなにかノスタルジーを感じてしまいます。
トンカツ、ハンバーグ、カツカレー・ハヤシライス・オムライス・スパゲッティナポリタンなどなど、今ではおなじみの洋食メニューです。
洋食といわれてきたトンカツ、ハンバーグなど、箸で食べるようになり、和食と洋食の垣根が低くなったように思います。
日本人の味覚に合わせて変化していった洋食と言われる料理をみてみます。
洋食は日本流西洋料理?

ナポリタンの奥に味噌汁が
明治時代に日本に入ってきた西洋料理は欧米人を対象にしたものでした。
西洋料理店やホテルが次々作られましたが、そこで出されるものは正式なイギリス料理・フランス料理でした。
日本人も恐る恐るナイフとフォークを手に取ったことでしょう。
おいしいけれど、ナイフとフォークでは食べた気がしない。という風潮のなか、明治の中頃(1890年代前後)から「お手軽西洋料理」のお店が登場してきました。
またその頃から盛んに家庭用の西洋料理の入門書が出版され始めました。
香辛料や道具がそろわないので本場と同じようにはできません。そこから西洋料理を日本流に変えていくきっかけができました。
日本の台所には鍋釜がたくさんあると言われます。和食の他にも洋風、中華風とアレンジして自分たちの味覚や食事作法に合わせてしまうのが巧みですからお手の物ですね。
洋食は日本人の味覚に合わせて変化したもの

イギリス料理として伝わったカレーは小麦粉でとろみがつけられました。
カレーライスは横浜の海軍が有名です。肉、たまねぎの他にじゃがいもやにんじんをゴロゴロ入れて一皿で栄養のバランスがとれるというシロモノに成長?
フランスのクロケット(クリームコロッケ)はじゃがいもコロッケに
肉のソテーだったコートレットはカツレツに、さらにトンカツになりました。
ハッシュドビーフはご飯と結びついてハヤシライスになりました。
鶏肉のトマト煮ライス添えは明治の終わりから大正にかけてチキンライスになり、昭和の初めにオムレツと結びついてオムライスになりました。最近はさらにデミグラスソースがかけられおいしそうです。
こうして西洋料理は日本に伝わって30~40年ではしやスプーンで食べる、また、パンにもご飯にも合う日本の料理「洋食」になりました。
洋食は新進気鋭の料理研究家が広めていった
昭和の時代は食料事情や食文化に大きな変化がありました。
戦後の食糧難がだんだんと落ち着きを見せてきた昭和32年にNHK でテレビの料理番組が始まりました。それが「きょうの料理」です。
「きょうの料理」は今も続く息の長い料理番組です。番組が始まった当時は、まだ4人に1人が栄養不足という時代。料理講師も意気に感じて新しい時代の料理番組に取り組まれたことと思います。
この番組で様々な洋食が提案されています。
昭和30年代はまだ家庭では洋食になじみがありませんでした。今では定番の洋食メニューがここから紹介されていきました。
手元に 小山 薫堂 氏が監修された講談社「きょうの料理 七十二候」という本があります。
七十二候の季節感に合わせて料理が紹介されています。
本の中から、昭和の洋食の紹介年を集めてみました。
きょうの料理の洋食紹介年は
数字は放送年。講師は敬称を略させていただきました。
昭和30年代
32年 かきのカレーライス 榊叔子(さかき・よしこ)
33年 ウスターソース 江上トミ(えがみ・とみ)
34年 ドイツ風レバー料理 河野貞子(こうの・さだこ)
〃 カツレツ 田中徳三郎(たなか・とくさぶろう)
〃 スパゲッティミートソース 榊叔子(さかき・よしこ)
〃 シーフッドピラフ 滝澤清子(たきざわ・きよこ)
〃 スイートポテト 飯田深雪(いいだ・みゆき)
35年 チキンドーリヤ 茂出木心護(もでぎ・しんご)
〃 トマトアスピック 河野貞子(こうの・さだこ)
〃 バービキュー 飯田深雪(いいだ・みゆき)
37年 ナポリ風スパゲッティ 村上信夫(むらかみ・のぶお)
〃 フライパンでできるデコレーションケーキ(クレープ・フィン・デコレ) 大谷長吉(おおたに・ちょうきち)
38年 ビーフシチュー 飯田深雪(いいだ・みゆき)
39年 かにのコロッケ 飯田深雪(いいだ・みゆき)
昭和40年代
41年 ニジマスのムニエル 河野貞子(こうの・さだこ)
〃 フレンチ・フライド・ポテト 田中徳三郎(たなか・とくさぶろう)
43年 ハヤシライス 村上信夫(むらかみ・のぶお)
44年 薄焼きラムのパン粉焼き 東畑朝子(とうはた・あさこ)
45年 冷製さけサラダ添え 豊田讓治(とよだ・じょうじ)
46年 手作りのパン 宮川敏子(みやがわ・としこ)
〃 チキンブロス 小川順(おがわ・じゅん)
〃 鶏肉の赤ぶどう酒煮込み(コック・オー・ヴァン) 小野正吉(おの・まさきち)
昭和50年代
50年 ガスパチョ 辰巳芳子(たつみ・よしこ)
51年 ラザニア 本谷滋子(もとや・しげこ)
52年 たらのブイアベース 豊田譲治(とよだ・じょうじ)
〃 メキシカンピラフ 滝口操(たきぐち・みさお)
54年 生ざけのムニエル 大原照子(おおはら・しょうこ)
55年 フォン・ド・ヴォー 小野正吉(おの・まさきち)
58年 サーモンパイ 入江麻木(いりえ・まき)
昭和60年代
60年 なすのディップ 入江麻木(いりえ・まき)
〃 レミ風トマト炒め 平野レミ(ひらの・れみ)
〃 りんご詰めローストチキン 牧野哲大(まきの・てつひろ)
61年 海の幸のカレーライス 高橋忠之(たかはし・ただゆき)
62年 冷製アボカドのクリームスープ アンドレ・パッション
63年 たらじゃがグラタン 大原照子(おおはら・しょうこ)
なにかその時代の息吹のようなものを感じます。
【まとめ】洋食は日本の食卓にすっかり定着しています

北海道発スープカレー
明治に入り肉を食べるようになり、西洋の食文化をどんどん取り入れてきた日本。
今日では食の事情もすっかり変わりました。
この先も日本の食の文化にはいろいろな要素が加わっていくことでしょう。
お読みいただきありがとうございました。
〈参考〉
- ポプラ社:食べものの大常識
- 講談社:きょうの料理七十二候
☆管理栄養士 すずまり が書きました。
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