たまねぎは農林水産省の指定野菜のひとつで、年間を通して北から南へリレーのように作付けされているので、1年中買うことができます。
国内収穫量は大根・キャベツについて堂々の第3位です。
和・洋・中の色々な料理に重宝されるたまねぎの原産地は中央アジア・地中海沿岸。
古代エジプトやギリシャではすでに栽培されていたそうですから長い付き合いの野菜です。
その薬効は古くから広く知られていました。
日本には明治時代に輸入された比較的あたらしい野菜です。
たまねぎの効果について見ていきましょう。
たまねぎの効果は

たまねぎにはたくさんの効果があります。一覧にすると
- 血液サラサラ効果
- 動脈硬化予防
- 血中脂質をコントロール
- 抗酸化作用
- 殺菌作用
- 血液循環を促進
- 食中毒予防
- 抗がん作用
など、たくさんあります。
以下に成分と働きをみていきましょう。
たまねぎの効果を出す成分は「硫化アリル」

涙のもとになるアリインをはじめ、たまねぎにはいろいろな硫化アリルが含まれています。
硫化アリルはイオウを含む化合物でいくつもあるアリル化合物の中のひとつのグループです。
たまねぎ・ニンニク・ニラといった「ユリ科」の植物に含まれています。
硫化アリルの健康効果は植物に含まれる化学物質である「フィトケミカル」として脚光を浴びています。
強い抗酸化作用、殺菌作用、血栓を溶かす、血液の循環を促進させる等の働きあり、食中毒予防や動脈硬化予防に優れた効果を発揮しています。
強い刺激臭があるのが特徴ですね。
たまねぎを切ると涙が出るのはアリインが催涙物質に変わるから

たまねぎが好きなのですが、切ると目が痛くなり、涙が出ます。
これはたまねぎにいくつか含まれている硫化アリルの中のアリインが原因です。
アリイン自体は無臭でたまねぎの細胞の中でおとなしくしているのですが、別の細胞にあるアリナーゼという酵素と出会うと分解されてアリシンにかわります。アリシンは強い臭気がある催涙物質です。これは切られたり虫にかじられたりされないようたまねぎが危機から身を守る大事な仕組みといえますね。
私はたまらず、まな板を換気扇の近くに持って行き、身体を風上(?)側にして切るようにしています。
切る前に冷やすと催涙物質が揮発しにくいそうです。
また、繊維に沿って縦に切った方が細胞を壊す度合いが少なく目への刺激が抑えられますが、たまねぎの健康効果を得るためには横に切ったほうがよいという意見もあります。
料理の用途によって切り方を変えるのも方法の一つかと思います。
アリインの健康効果は血液サラサラが代表
アリインは切ってアリシンに変わると目が痛くなり涙が出ますが、私たちの健康にとても有益です。
コレステロールの代謝を促して、血栓ができにくくする「血液サラサラ」効果が第一にあげられます。
「善玉コレステロールを増やして悪玉コレステロールを減らす」ともいわれます。
シクロアリインは加熱すると増えます
シクロアリインは硫化アリルの一種です。加熱すると増えるのが特徴です。血中脂質をコントロールして動脈硬化を予防します。
たまねぎの効果として抗がん作用が期待されています

このアリインを切ることでアリシンに変わった物質が抗菌作用・抗がん作用によいと期待されています。
抗がん作用に関しては、がん細胞に作用して細胞死を招く研究結果が出ています。
正常な細胞には影響がないので、抗がん剤を減らせるのはないかと期待されています。研究が進んでほしいですね。
たまねぎの効果として糖質の代謝に有効です

また、ビタミンB1と結びつくと安定して吸収がよくなるアリチアミンになります。
ビタミンB1は炭水化物をエネルギーに変えるときに必要なビタミンです。
多くの方がでんぷん質だけになるまで精白したご飯を主食としている現在では、胚芽や糠(ぬか)にあるビタミンB1が期待できません。
ビタミンB1は無くてはならないビタミンです。不足すると疲労・食欲不振・不眠・イライラなどの症状が出ます。
ビタミンB1が豊富な豚肉はたまねぎと一緒に料理するとよいでしょう。
たまねぎの弱点は・・・
硫化アリルはありがたい効果があるのですが、加熱によって消失します。また、水溶性なので長く水にさらすと溶け出てしまいます。
しかし切ってから1時間ほどおくと、酵素の働きで熱に強い物質に変わるため、加熱調理の際には早めに切っておきたいですね。
たまねぎを炒めると甘くなる不思議

生のときはとてつもなく辛いたまねぎですが加熱すると辛みが消えて甘みが出てきます。
たまねぎには甘み成分のブドウ糖・果糖・ショ糖などがあり、加熱によって水分が出てこれらの甘み成分が濃縮されます。
また、加熱によってたまねぎの細胞が壊れて糖が組織の外に出てくるため甘みを感じやすくなります。同時に辛み成分、香り成分が揮発などで減少して糖が分離されることもあります。
あめ色からカラメル色になるまで、じっくりと炒めたたまねぎの独特のコクのある色と甘さ・香りはカレーには欠かせません。
カラメル色まで炒めるのは家庭ではなかなか時間がかかりますが、焦げ付かないように火加減を調節しながら、せめてあめ色までは炒めたいと思うところです。
硫化アリルが熱に強くなるよう、早めに切っておきましょう。
たまねぎの食べているところは葉!?
普段食べているところが「葉」だといわれてもピンときませんね。
たまねぎを縦半分に切ってみると、一番下に芯があります。ここがたまねぎの「茎」だそうです。
たまねぎの原産地、中央アジアのあたりは乾燥地帯です。その厳しい自然環境に耐えるため葉に養分を蓄え、重なり合って丸く成長するようになったようです。
さらに外側の皮はパリパリとしてセロファンで包んだように自分自身を守っています。この皮のおかげで乾燥に強く長く貯蔵出来ます。
たまねぎの一般的なものは黄たまねぎ
たまねぎは一般によく出回っているのが黄たまねぎと呼ばれる種類です。他に生食用の紫たまねぎ、白たまねぎがあります。
小さくてかわいいペコロスは黄たまねぎの成長を抑えながら育てたものだそうです。
大きく作りたいときはひと株ごとの間隔を大きくするそうです。市場に流通させるにはそろった大きさが求められますが、生産者が自家用で作った大きなたまねぎは迫力があり、甘くてしっかりした味でした。
たまねぎは周年栽培・・・たまねぎの供給の仕組み
年中出回っている野菜が増えています。
農林水産省では14品目の野菜を指定野菜として通年流通するよう計画しています。
たまねぎは南北に長い日本の地理的な特徴を生かして、品種の改良、栽培方法の工夫、さらに一部の時期には輸入も加えて途切れることなく供給できる消費者にとってありがたい循環が出来ています。
たまねぎは貯蔵して出荷を調整出来る特徴も強みとなっています。
主な産地は北海道・兵庫・佐賀などです。
北海道では3月頃に種をまき8月から10月に収穫し、貯蔵しながら翌年4月頃まで出荷します。北海道では大規模な農場で種まきから貯蔵まで機械化が進んでいます。
一方、兵庫や佐賀では9月頃の種まき、翌年4月から6月に収穫、11月から翌年3月頃まで出荷するというサイクルです。
秋にまいたものを早く収穫し3月から4月に出荷するものを新たまねぎとして出荷します。新たまねぎはやわらかでみずみずしく刺激も少なくて甘みが強いので生でおいしいのですが、日持ちが悪いので早めに食べるようにしましょう。
年中出回っているたまねぎですが、この新たまねぎは明確な旬がありますね。
秋まきのたまねぎと春まきのたまねぎでは品種が異なります。地域によって日照時間が異なるため、どこで育ててもよいというわけにはいかないようです。
たまねぎは犬を与えてはダメです
体によく、おいしいたまねぎですが、犬には絶対ダメ!食べると「たまねぎ中毒」になると脅かされました。
犬だけではなく、猫なども含め、ほとんどの動物はたまねぎの成分中のイオウを含む化合物によって赤血球が破壊されてしまいます。そのため溶血性貧血となり、ひどいときには死に至るそうです。猫はたまねぎの匂いから進んで食べることはないので猫の報告例はないということです。
スライスオニオンをよろこんで食べるわんちゃんはいないでしょうが、ハンバーグなど、肉と混ぜたものは要注意ですね。
家の中で家族同様に暮らすわんちゃんが増えている昨今、ついうっかりあげてしまうということがないように気をつけたいものです。
不思議なことに私たちヒトは赤血球の破壊を防ぐ物質を持っているそうです。
たまねぎの語源は真珠

たまねぎの英語名「onion」はラテン語で真珠を意味する「unio」に由来するそうです。
真珠のように層を重ねながら白く丸く成長する様子から、また、健康的で神秘なパワーを持つと信じられてところからつけられたすてきな名前だったのですね。
【まとめ】たまねぎの効果は
- 血液サラサラ効果
- 動脈硬化予防
- 血中脂質をコントロール
- 抗酸化作用
- 殺菌作用
- 血液循環を促進
- 食中毒予防
- 抗がん作用
など、たくさんありました。
生の場合、加熱して料理にした場合とみてきましたが、健康効果の「フォトケミカル」の部分だけを考えるのではなく、食材として程よく利用していきたい身近な食材です。
お読みくださりありがとうございました。
〈参 考〉
- 高橋書店:あたらしい栄養学
- 群羊社:たべもの・食育図鑑
- 小学館:食材図典―生鮮食材篇―
☆管理栄養士 すずまり が書きました。
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