タコの栄養は超低カロリー、低脂肪!

みずだこ

 

生きているタコって、かなりとらえどころのない形をしています。

世界的に見て、タコを食べる国は少ない中、日本では弥生時代から好んで食べていたとか。

世界の水揚げ量の約6割が日本での消費と聞きおどろきます。

日本へのタコの輸出で経済的に豊かになった国も・・・

タコの栄養と周辺の話が興味深いので、ご紹介します。

 

 

タコの栄養 1 超低カロリー

タコの食べられるところの大半は筋肉です。ほとんど脂質、糖質を含まず、超低カロリーの動物性たんぱく質です。

生の食品 100g中の エネルギーと脂質 (食品成分表の表記です)

エネルギー (Kcal) 脂質 (g)
まだこ 76 0.7
いいだこ 70 0.8
みずだこ 66 0.9
するめいか 83 0.8
あまえび 98 1.5

 

 

タコの栄養 2 タウリンが豊富

タコの干物

タコの干物

江戸時代の食物事典に和歌で解説した “和歌食物本草(わか しょくもつ ほんぞう)”に

「蛸(たこ)こそは 腹中(ふくちゅう)にある 古血(ふるち)をば よく破るなり血を浮かすなり」とあるそうです。

たこはお腹にとどこおった古血を取り除き、血流をよくすると教えています。現代の栄養学に照らすとその働きはタコに豊富に含まれるタウリンの効能ということがわかります。

タウリン

タウリンは肝臓の働きをサポートします。

イオウを含んだアミノ酸の総称である含硫アミノ酸のひとつです。

身体の中のほぼすべての組織に存在していますが、人の身体では、特に肝臓、心筋、筋肉、脳、肺に多く含まれています。

働きは血液中のコレステロールや中性脂肪を減らす高い血圧を下げる肝臓の解毒能力を強化するなど、いろいろな働きをしています。

タウリンは水溶性なのでスープや鍋物で汁ごと食べるとよいでしょう。

 

 

タコの栄養 3 ビタミンB2が豊富

タコには皮膚や髪に張りとツヤを与えるビタミンB2が豊富です。他にも口内炎、目の充血などを和らげる効果があります。

ビタミンB2はおもに脂質がエネルギーにかわる際に深く関わっています

不足すると食べた脂質がうまくエネルギーにかわらず、余った脂質が残り、顔が脂っぽくなったりニキビができたりします。さらに体内にエネルギー化されない脂質が余り、太りやすくなることもあります。

こってりした味が好きな方もビタミンB2を意識して摂りたいですね。

ビタミンB2はタコの他にも牛乳やチーズなどの乳製品、レバー、サバなどの青魚、鶏卵などの動物性食品に含まれています。

ビタミンB群は水溶性なので毎日少しずつ摂りたいですね。

 

 

タコの種類

日本で一般的に流通しているおなじみのタコは3種類です。

マダコ

もっとも一般的なタコです。他のタコより漁獲量が少なく、さらに近年、マダコ自体の漁獲量が減り高値になっています。

ゆでた状態で流通します。

ミズダコ

タコの水揚げの大部分を占めるミズダコは水っぽいと敬遠されていましたが、食べ方が多様化したことと、マダコの減少から需要が増加しています。

酢ダコなどにも加工されています。

イイダコ

小さなタコで甘みと程よいうま味があります。

イイダコの「イイ」は飯(めし)のこと。卵が飯粒のように見えるところから「イイダコ」の名前がつきました。

 

 

タコの食べ方

江戸エコ重の桜ご飯 東京ガス:炎の食情報サイトより

上の写真でお重のご飯にのっているのがタコの足です。

これは皇居の「楠公(なんこう)レストハウス」で東京ガスが提供しているメニューです。江戸時代の料理本からの再現したものとのことです。

このタコご飯を春の桜の時期にいただくと、桜に見立てているのかと納得できます。タコにこんな使い方もあるのですね。

刺身や寿司でいただく以外の、おなじみのタコの食べ方をあげてみましょう。

 

明石焼き

明石焼き

明石焼き

兵庫県の明石(あかし)には1900年(明治33年)ごろから、小麦粉とをといてタコを入れて丸く焼き、塩味のだしで食べる“明石焼き”が食べられてきました。“明石焼き”は“玉子焼き”ともよばれるほど、玉子焼きのように黄色く、ふわふわしています。お店では小さな足つきのまな板のような板にのせて出してくれます。

 

タコ焼き

たこ焼き

タコ焼きの遠いルーツは16世紀の茶人、千利休とか・・・

千利休は、水溶き小麦粉を鉄板で薄く焼き、みそをぬって巻いた “麩(ふ)の焼き” を茶席に出したようです。これが18世紀頃に江戸で“文字焼き”につながりました。

この文字焼きにキャベツやネギ、肉が加わって“お好み焼き”になり大戦後、大阪に伝わったということです。

この“お好み焼き”と、丸く焼く“明石焼き”が元になってソースをかける“タコ焼き”になったということです。

大阪生まれの“タコ焼き”が東京に進出したのは1963年、定着していくのは1970年代になってからとなります。

数年前、大阪でいただいたコネギがたっぷり乗ったポンスの “タコ焼き” のおいしかったことが忘れられません。さすが本場!と感じ入りました。

 

タコ飯

たこ飯

たこ飯 レシピ大百科-味の素より

おいしそうな“タコ飯”ですが、このタコ飯はゆでダコを使っています。タコを料理に使う際はゆでだこを使う方が無難できれいに仕上がります。

生だと炊き上がりのタコが赤くきれいな色になるそうですが、生のタコを使う場合、塩を振りかけて表面のヌメリを丁寧に落とし、吸盤の中の汚れを出すなどの下処理が大切になります。

タコが獲れる愛媛県、香川県、広島県、岡山県、兵庫県などの瀬戸内海周辺の地域や島々で郷土料理として作られています。

 

おでんダネ

おでんのイイダコ

料理研究家の先生によると“おでん”ほど、日本全国で作られていながら、各地域、各家庭で異なる料理は見あたらないほど多様性に富んでいるそうです。

使う具材はもちろん、だしの取り方、調味料とバラエティー豊かです。

その中で、関西以西ではおでんダネにイイダコが入ります

写真には串に刺したイイダコが一緒に盛られています。

 

タコわさVSアヒージョ

“アヒージョ”はスペインの定番料理です。にんにく、たかのつめを加えたオリーブオイルでぶつ切りにしたタコを煮ます。簡単でおしゃれなおつまみで思っただけでも白ワインが飲みたくなるような・・・

一方、“たこわさ”は生またはゆでたタコをわさびとあえたものです。居酒屋メニューの定番だそうですが、ご飯だって進みます。

 

タコスミ料理がない理由

“イカスミ料理”は黒い色にインパクトがあるおいしい料理です。それに対して“タコスミ料理”は聞いたことがありません

タコはスミの量が少なく、取り出しにくい上にサラサラして加熱すると分解してしまうからだそうです。

 

 

タコを食用にする国々

たこつぼ

タコツボ

日本では有史以前からタコを食べていたとされていますが、世界的に見ると極めて少数派です。

日本以外でタコを食用にしている国はメキシコ、イタリア、スペイン、ギリシアなどの少数の国々です。

明石産のタコはおいしいといわれますが水揚げ量は多くはありません。明石を始め国産品は料理屋さんに届くことが多いようです。

普段、私たちが食べているマダコの7割以上がアフリカ北西のモーリタニアで水揚げされたものです。

モーリタニアではタコは「ヌルヌルして気持ちが悪い」と食べないそうですが、ひとりの日本人の指導により立派に漁法を確立しました。

そのとき用いた漁法は比較的簡単といわれるタコツボを使う方法とのことです。タコの漁も軌道に乗り、外貨獲得の道を作り収入も安定したと言うことです。

その恩義を東日本大震災の折に義援金という形で示してくださったそうです。

 

 

【まとめ】タコは全身が筋肉でカロリーも脂質も低い

タコは低カロリー低脂肪で、その筋肉にはイオウを含んだアミノ酸の1種である“タウリン”を含んでいます。

タウリンは血液中のコレステロールや中性脂肪を減らす高い血圧を下げる肝臓の解毒能力を強化するなどいろいろな働きをしています。

また、脂質がエネルギーに変わるときに必要なビタミンB2もあります。

日本で一般に流通しているタコは マダコ、ミズダコ、イイダコの3種です。

この中でマダコが全体の8割を占めていますが、その多くはモーリタニアから輸入されたものです。モーリタニアは日本人の指導によりタコ漁が軌道に乗り、経済基盤が整ってきたということです。このお話を耳にするたびに、「あなたもよく、私もよく」のよいお話だと思っています。

お読みいただきありがとうございました。

〈参考〉

  • NHK出版:からだのための食材大全
  • ポプラ社:食べものの大常識
  • 小学館:新版食材図典
  • 家の光協会:和の薬膳食材手帳

☆管理栄養士 すずまり が書きました。

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管理栄養士のすずまりです。 食べものの文化的な側面など「おとなの食育」の観点から書いています。