日本では大昔からくじらを食べてきました。
実際私が学童だったころも給食で大きな鯨の切り身が出ていましたし、学校の栄養士として勤めてからも鯨のかりん揚げなどで出していました。
いつの頃からか鯨食に対しての批判の声が国際社会で大きくなり、手にも入りにくくなってきました。
調査のための捕鯨で鯨肉を学校給食に回していただけることもあり、1月の全国学校給食週間ではほんのわずかずつですが子供たちに提供することができています。
2019年7月の商業捕鯨再開でくじらが学校給食にも再び定番の献立に返り咲くかどうかの瀬戸際です。
くじら肉が学校給食に登場したのは1950年代から
日本でくじら肉をよく食べるようになったのは20世紀の初め頃です。この頃の捕鯨は大型の捕鯨船で南極の近くまで行くようになりました。
特に1950年代から60年代にかけて大きな船団が南極海で盛んに捕鯨をするようになりました。
大きなくじらだと体長30メートル、体重200トンもあるシロナガスクジラなどを捕鯨しました。
たくさん流通するようになり、牛肉や豚肉より安価ということで家庭や学校給食でも出されるようになりました。
くじら肉は大昔から食べてきました

日本では大昔からくじらを食べてきました。
何千年も昔の縄文時代の遺跡からもくじらの骨が出土しています。
その頃の捕鯨は海岸に近づいてくるくじらを捕る方法でした。遠洋に出て捕鯨はできませんでした。
300年程前の江戸時代には大勢で船をこいでくじらをとる捕鯨が行われるようになりました。まだ近海です。
くじら肉は戦後の食糧難を乗り越えるのに必要でした

くじらのベーコン
その後、上記のように南極海まで出かけてくじらを捕るようになりました。
戦時中は南極海捕鯨ができなくなる時期がありましたが、近海での捕鯨は続いていました。
第二次世界大戦後の食糧難時代はちょうど流通保存技術が向上して再び始まった南極海捕鯨によりくじら肉の消費が一気に拡大しました。
1962年までの肉の消費量はくじら肉がトップで牛・豚・鶏を上回っていたことからもくじら肉の重要性がわかります。
しかし、シロナガスクジラはもともと数が少ない上に捕鯨のためにますます少なくなりました。
とうとう1963年に国際的にシロナガスクジラの捕鯨が禁止されました。
他の種類のくじらも同様に、野生のほ乳動物で知能も高いくじらを捕ることへの批判が多くなりました。
世界的に商業捕鯨をやめる動きが強まる中、日本も1985年に商業捕鯨を中止することを決めました。
今では捕獲するくじらの種類や数を規制したり、調査のためというかたちで捕鯨した肉が若干あるという状態です。
しかし、量が少ないため一般的な流通はなく、なかなか食べることができていません。
捕鯨に対する日本のスタンスはあくまで商業捕鯨再開
日本は国際捕鯨委員会(IWC)に1951に加盟しています。
この後IWCは1982年にはくじら資源の枯渇を防ぐためとして商業捕鯨に反対の立場をとりました。
日本も1988年に商業捕鯨を一旦中断しました。
そして商業捕鯨再開に向けての調査を始めました。利益を出してはいけない、ある意味の国営事業です。これが調査捕鯨と呼ばれるものです。
日本は捕鯨を反対する国からの圧力も受けてきましたが、地道に国際捕鯨委員会にたくさんの調査書を提出してきました。
ですが反対ありきの論調で話し合いや歩み寄りといったものは一切ない状態が続いたそうです。
とうとう2018年12月、暮れも迫った時期に日本は国際捕鯨委員会の脱退を決めました。
2019年7月に1988年以来31年ぶりとなる商業捕鯨を再開します。北海道釧路沖などで捕鯨するそうです。
商業捕鯨については水産庁のWebページもご覧ください。
https://www.jfa.maff.go.jp/j/press/kokusai/190701.html
くじら肉を学校給食週間に出しています

南房総市和田町仁我浦 道の駅Webページより
1月24日から1月30日までの7日間は文部科学省が通達を出して行う「全国学校給食週間」です。
この期間は「学校給食にの意義や役割について児童生徒や教職員、保護者、地域住民の理解と関心を深めるための週間」としています。
いくつかの例は示されるものの、基本は食育のハイライトの週として、できることをするという学校や自治体が多いと思います。
その中で取り組みやすいのは献立の工夫ではないでしょうか。
郷土料理や地場産物の使用に焦点を当てたもの、昔の給食などが献立表を賑わせます。
一時は学校給食から姿を消したくじら肉ですが、調査捕鯨が始まった頃から昭和30年代の給食などとして取り上げるようになりました。
食べやすく小さく切った角切り肉に酒・しょうゆなどで下味を付けて片栗粉をまぶして油で揚げます。さらに甘辛のタレをかけるとなかなかおいしい料理になります。
私たちはくじらとどう向き合っていくのか

くじらのオブジェ
今までは補助金・助成金で一部をまかなってきた調査捕鯨ですが、今後は商業捕鯨として利益を出さなければならなくなります。
くじら肉の食品としてのよさをアピールし、またくじらを食べてきた日本の食文化を前面に出していくことが必要になるでしょう。
一度食生活から消えざるをえなかったくじら肉ですが、今後は時々はくじらを食べる食生活をしていくのでしょうか。
調理法や味を忘れてしまって、獲ったくじらが無駄になることはさけたい事態です。
学校給食がその役割を担えるといいと思います。
くじらは畜肉。栄養面で優れている

くじらの刺身
食料自給率の統計や食品成分表の分類ではくじらは魚ではなくて獣肉の分類に入っています。
くじらは低カロリー・低コレステロールでヘルシーな食べものです。
100g中 | エネルギー
kcl |
たんぱく質
g |
脂質
g |
鉄
mg |
くじら赤肉生 | 106 | 24.1 | 0.4 | 2.5 |
牛かた赤肉生 | 201 | 20.2 | 12.2 | 2.7 |
豚かた赤肉生 | 125 | 20.9 | 3.8 | 1.1 |
鶏むね皮なし生 | 121 | 24.4 | 1.9 | 0.4 |
寒い海で泳ぐため皮下に厚い脂肪組織があり、食肉部には脂が少なくなっています。
また、その脂肪分も魚の脂と働きが同じ多価不飽和脂肪酸で血液をサラサラにしたり(ドコサヘキサエン酸)、脳の働きをよくする(イコサペンタエン酸)ものです。
ビタミンAも豊富です。肝油ドロップはくじらの肝臓に多いビタミンAを誰でも食べやすくしたものです。私の通った幼稚園では当番が一粒ずつ開けた口に入れて回ってくれました。
くじらには疲労を軽減させる効果があるバレニンがあることがわかっていて、サプリメントや栄養剤が開発されています。
他に大きなメリットとして、くじらの肉はアレルギーを起こしにくいといわれていて、ほかの肉類が食べられない人にとっては選択肢が増えることになります。
【まとめ】いよいよくじらの商業捕鯨が再開します

和歌山県学校給食会より
日本の食生活に古くから登場していたくじら。
くじらが作ってきた食文化もあります。
それらが商業捕鯨反対の声の前で31年間も消えてしまいました。
ですが調査捕鯨でわずかながら学校給食にも供給され食文化の紹介がされてきました。
強気に出た日本が2019年7月に商業捕鯨を再開して、反対国との間に新たな軋轢(あつれき)が生じるのか、心配も大いにあります。
とにかく捕獲したくじらが無駄にならないように上手に流通してほしいと思います。
お読みいただきありがとうございました。
〈参考〉
小峰書店:肉やたまごから考える地球環境
☆管理栄養士 すずまり が書きました。
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