酢は原料を一度アルコール発酵させてから作ります。
そんなにまで手間をかけても、大昔から酢を作ってきたのは、数々の効果があるから。
料理に酸味をつけるだけでなく保存性を高めたり、食欲を増進するなどがあります。
目次
酢の効果

酢は塩についで古くから使われてきました。
そんなに古くから大切に使われてきたのは酸味をつけるからだけではありません。
理由は四つあります。
1,強い殺菌力と防腐力
2、食欲増進作用
3,調理効果
- 魚などの生臭さを消す
- 塩辛さをやわらげる
- アク抜き
- 変色防止
4,健康効果
- 体をやわらかくする、疲労を回復させる
- 肩こりの軽減
- 生活習慣病にも効果があるといわれている
- 脂肪分解促進の効果
この中でも特に強い殺菌力と防腐効果は体験を通して効果を知ったのではと思われます。
冷蔵庫のない時代には重要なことですね。
調理効果についても使っていく中で認識されていったことでしょう。
現代のように多種多様な防腐剤や保存料を使えない中、酢は貴重だったと思います。
酢の伝統工法
酢を作るにはまず酒を造る必要があります。
その酒は穀物、果実、いも類、野菜など、いろいろなものが材料になります。材料が異なると酢のあじわいが変りますので、多種多様な酢が作り出されます。
酢の伝統工法は、材料をアルコール発酵させて「もろみ」を造り、ゆっくりと酢酸(さくさん)発酵させます。
低価格の量産品では酒を造る工程を省いて、材料に直接アルコールを加える方法をとります。かかる手間も時間も少ないので低価格の製品ができます。
酢の種類
穀物酢
穀物を原料にした酢です。
日本農林規格(JAS)では米で作った米酢とその他の穀物で造った酢を分けています。
日本では米から作る米酢(こめず・よねず)と酒を造る過程でできる粕酢(かすず)が代表的です。
ヨーロッパ、アメリカでは麦芽酢(ばくがす)が多く使われます。
穀物酢はどんな料理にもあうため、万能調味料として大量に使われています。
米酢(よねず・こめず)
米を原料とした酢です。日本の代表的な穀物酢です。
蒸した米にコウジカビをつけて培養して、麹(こうじ)をつくります。米のでんぷんが糖に変った後、酵母によるアルコール発酵ののち、酢酸(さくさん)菌による酢酸発酵の三段階の工程を経て、食酢になります。
酸味が強く、コクがあります。ツンとくる刺激臭は強くなくまろやかです。
アミノ酸も多種含み、うま味があります。
黒酢

鹿児島県福山町などで生産される米酢です。
原料、作り方は米酢と同様です。
大型の中国式のつぼに蒸し米、麹(こうじ)、水を入れて密封し、屋外で1~3年かけて熟成させます。
成分の反応で黒ずんだ色になります。
味はまろやかで、疲労回復にもよいとされて、料理に使うだけでなく、飲料としても使われています。
大きなつぼが屋外に並ぶ様は圧巻ですね。
玄米酢
原料に精白していない玄米を使って作ります。
作り方は米酢と同様です。
長期間熟成させるのでコクとまろやかさがあり、飲料にも利用されています。
粕酢(かすず)
粕酢は日本独特の酢です。
日本酒の副産物である酒粕(さけかす)を利用します。
米酢より歴史は浅いとされますが、江戸時代には庶民の酢として使われていたようです。
色が濃く、コクがあります。香りもあり日本料理やすしに使われます。
麦芽酢
イギリス、ドイツ、アメリカでよく使われている穀物酢です。
原料は麦芽、麦、とうもろこしなどで大麦を発芽させてできた酵素を利用して糖化させ、アルコール発酵のあと、酢酸発酵させます。
ビールに似たさわやかな香気があります。
大麦に由来するアミノ酸が多く、洋食に合うとされています。
果実酢
果実を原料としています。
アップルビネガー、ワインビネガー、柿酢などが有名です。
これまで日本ではなじみが薄かったですが、食生活の洋風化に伴い、ドレッシングなどで使われるようになりました。
アップルヴィネガー
りんごを原料としています。
りんご果汁をアルコール発酵させ、そこに酢酸菌をてんかして酢酸発酵をさせます。
上品で爽快な香りがあります。
酸味はおだやかで、アミノ酸は少ないとされています。
ワインヴィネガー
フランスで広く使われています。
ヴィネガーは元々はこのワインビネガーを指したものだそうです。
アップルビネガー同様、ブドウ果汁をアルコール発酵させてワインにし、さらに酢酸菌による酢酸発酵を経て製品になります。
ワイン特有の香りがあります。
また、ワイン同様、赤と白があります。
赤の酢はタンニンが多く苦みと渋みがあり、白の酢はクセがないとされています。
肉料理や各種ソースの風味付け、ドレッシング、ピクルス、マヨネーズなどに使われます。
バルサミコ酢
近年日本でもおなじみのバルサミコ酢は白ワインを元に造る、イタリアの酢です。
年代物はかなり高価です。
柿酢(かきす)
甘柿、渋柿どちらでも使えます。
果実には自然の状態で酵母や細菌がついています。
熟柿のへたをとり、水洗いして密封、冷暗所に置くと酢になるところから、自家製の酢として造られてきました。
和歌山、岐阜、富山などの各県で造られています。
まろやかさとコクがあり、日本料理に向くとされています。
蒸留酢(じょうりゅうす)
果実酒のアルコール分を蒸留して集め、ここに酢酸菌を働かせて造る酢です。
蒸留酢は欧米に多く、日本には少量が輸入されています。
酒精酢(しゅせいす)
いも類や糖蜜から得られる純アルコールを原料とした酢です。
現在もっとも多く生産されています。
アルコールを5~8%に希釈して酢酸菌が活発になる栄養源を加えます。
そこに種酢を入れ、酢酸発酵をさせて造ります。
淡泊でクセがなく、加工用に適しています。
香気に乏しいとされています。
合わせ酢を造ってみましょう

すし酢など、市販品もありますが、自分で造ると味の調節ができますし、好みの酢を使うこともできます。
好みの合わせ酢を造るのも楽しみですね。
作りやすい分量を載せました。
二杯酢
- 米酢・・・大さじ1
- 醤油・・・大さじ1
同量の二種の調味料を合わせるだけ。
タコやイカ、貝類など旨味のある食材の和えものに向いています。
三杯酢
- 米酢・・・大さじ1
- しょうゆ・・・大さじ1
- みりん・・・大さじ1
こちらは三つの材料を同量合わせます。
ほんのり甘いです。
海藻や野菜の酢の物に向きます。
すし酢
- 米酢・・・1/2カップ
- 砂糖・・・大さじ5
- 塩・・・小さじ1強
三種の調味料を合わせます。
しょうゆを加えると酢の物に使えます。
南蛮酢
- 米酢・・・大さじ4
- しょうゆ・・・大さじ4
- だし汁・・・大さじ4
- みりん・・・大さじ1
- 砂糖・・・大さじ1
- 赤とうがらし(小口切り)・・・1本
ひと煮立ちさせて使います。
鶏の唐揚げなど揚げ物に合います。
【まとめ】酢の効果と味わいで食生活に一工夫を
酢の効果と酢の製造についてみてきました。
伝統的な酢の作り方は、まず発酵させてアルコールを造り、そこからさらに酢酸菌の作用で発酵させます。
アルコールのままでもだんだんと酸味が増してきますが、積極的に酢を作って来た昔の人は酢を大切な食生活のパートナーとしてきたのですね。
リンゴ酢のすし酢などもおもしろいかもと考えています。いろいろ試してみたいところです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
〈参考〉
- 小学館:食材図典Ⅱ
- NHK出版:からだのための食材大全
☆管理栄養士 すずまり が書きました。
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