さつまいもの歴史

さつまいも

 

さつまいもは暖かいところが好きです。日本原産ではなく、新大陸の作物です。

このさつまいもが恐慌食(きょうこうしょく)として、戦中戦後の日本を救い、平和な今は「甘くおいしく」と進化を遂げています。

そこで「さつまいもの歴史」です。

 

 

さつまいもの歴史を考える

伝来経路

さつまいもはメキシコを中心とする熱帯アメリカで生まれた新大陸作物です。

寒いところは苦手です。熱帯では一年中育ちますが、現在の主産地、温帯では秋に収穫する1年生の作物です。

コロンブスにより紹介され、ヨーロッパ経由で広まったと考えられていましたが、研究により海路でパプアニューギニアなどの大洋州諸島に伝わり、次第に世界に広まったと考えられるようになりました。

日本に最初に上陸したさつまいもは1597年(慶長2年)、中国から宮古島にもたらされたといわれています。

 

さつまいもは外国からもたらされましたが、日本原産の古い付き合いの芋もあります。里芋です。

稲作の基にもなった里芋については以下の記事をご覧ください。

里芋は縄文時代からのお付き合い

 

伝来経路にみるさつまいもの別名

さつまいもの初上陸は400年以上前と、かなりになりますが、日本で栽培が広まったのは1705年(宝永2年)、南薩摩山川村の漁師、前田利右衛門と伝わっています。最初は琉球(沖縄)から、つるの挿し木と芋を薩摩に導入しました。

まだ「薩摩(さつま)芋」という名前ではありません。

外国から入ってきた芋なので「天竺(てんじく)芋」「唐(から)芋」とも呼ばれていました。また沖縄からもたらされたので「琉球(りゅうきゅう)芋」とも呼ばれていました。

この頃は薩摩藩あたりの地域限定の作物でした。

 

 

救荒作物として広まった

干ばつ

さつまいもの葉は光に合わせて茎が少しずつ角度を変えます。葉の向きも変わるので、弱い光でも光合成を効率よくおこなえます。

また、根が深く水や養分をしっかり吸収できるので干ばつに強く、やせた土地でも育ちます同じ土地の面積で比べた場合のエネルギー量は稲の2~3倍にもなります。

このような特性から救荒作物として凶作の年の命を支えてきました。 

 

 

甘藷(かんしょ)先生のお墓は目黒不動に

青木昆陽先生のお墓

甘藷先生のお墓 目黒区のWebサイトより

甘藷先生で親しまれている青木昆陽はさつまいもを全国に紹介・広めた立役者といわれています。

ことの始まりは将軍徳川吉宗が薩摩藩から「唐芋」を召し上げて、青木昆陽に試作させたというところからで、1734年以降に広まっていったということです。

このことから青木昆陽は「幕府薩摩芋御用掛」に登用され、伊豆諸島へも普及させていきました。

その頃の文書にさつまいものことを「味が甘く穏やかで、毒がない」とあったそうです。まだ庶民には珍しい新食材であったため食べず嫌いをなくしたいとの思いがあったのでしょう。

子供時代、目黒不動尊に遊びに行き、すぐ近くの瀧泉寺(りゅうせんじ)にある青木昆陽先生のお墓を訪ねたことがあります。甘藷先生のお墓は墓地にひっそりとありました。

 

 

くりよりうまい・・・

くりVSさつまいも

 

さつまいもを食べるとき誰かが「栗よりうまい十三里」とか、あるいは「栗よりうまい十三里半」とお約束のように言い出しませんか?これは江戸時代から焼き芋屋さんで使われていたキャッチフレーズです。リズミカルでとんちも地理情報もあるキャッチフレーズで、こんなに長く受け継がれているものは他に見当たらないですよね。

元々は江戸時代に登場した京都の焼き芋屋さんが洒落を込めて「八里半」と看板に掲げたのが始まりです。

さつまいもの食味はくり(九里)に似ていますが、ちょっと遠慮して「八里半」としたそうです。

子供のころは耳で聞くだけだったので「栗より」が「九里」と「四里」とはわからず、このしゃれがわかりませんでした。

 

その後、焼き芋は江戸にも伝わります。最初は京都と同じように「八里半」としましたが小石川の焼き芋屋さんが「十三里」としたそうで、ごぞんじの

九里+四里=十三里 の計算ができあがりました。

「十三里」はさつまいもはくりと比べても遜色(そんしょく)ないというものですが「十三里半」はさつまいもの方が上!という気概と江戸っ子の負けん気が伝わってきます。この洒落、もちろん江戸っ子に大受けで評判を呼び、今日まで続いているというわけです。

 

食べものではありませんが京都に本店がある櫛(くし)屋さんに「十三や(じゅうさんや)」さんがあります。

こちらも「く(九)」と「し(四)」で十三です。「苦」と「死」の連想を避けての屋号ですね。

 

 

10月13日は さつまいもの日

さつまいもがおいしくなる秋まっただ中の10月の13日は「さつまいもの日」です。

これはおいしいさつまいもの産地として知られる埼玉県川越市の「川越いも友の会」が制定しました。

この川越がまた、ちょうど江戸からの距離が十三里(約52㎞)というのも面白い偶然ですね。

 

 

川越がさつまいもの産地になったのはなぜ?

川越の街並み

川越は武蔵野台地に位置しています。武蔵野台地は関東ローム層が厚く堆積し、水はけと通気性がよい火山灰土と大量の広葉樹の落ち葉が作る堆肥がよい畑土を作っています。さつまいも栽培に適していて古くから良質のさつまいもを産出してきました。

大消費地の江戸との距離も程よく、貯蔵するにも流通するにもよかったのだと思います。

 

 

戦時中のさつまいもは命の糧・・・でもお味は?

さつまいもの葉

戦時中は葉も茎も食べました

「戦時中は芋がゆをよく食べたが米粒はほとんどなかった」今でも年配の方からよく聞くお話です。前述の様に土地の収量で比べると稲の2~3倍のエネルギーがまかなえるさつまいもは、また、初心者でも作りやすい作物です。そこで少しでも遊んでいる土地にはさつまいもを作って食糧不足を補いました。少ないお米を用いて主食を作ること「節米料理」と呼ぶそうです。

食べ盛りがいるのに食べものがないって、どんなに切ないことだろうと思います。その頃は空腹を補うために食味より大きさが優先されたさつまいもを作ってご飯の代わりに、またご飯に混ぜて食べました。

私も祖母から「農林○号は大きいばかりでおいしくなかった」とよく聞かされました。その頃は仕方なく食べたものでも、「あの思いはもういい!」と思う方はたくさんいます。今でも一部の方はさつまいもに救荒食の面影を引きずっているようです。

 

すずまり

戦時中、上野公園の、今は東京国立博物館前庭の芝生を近隣の小学生が動員させられて芝生をはぎ取り、そのあとにさつまいもを植えて、食糧難に備えたそうです。

その他にも公園の緑地帯の多くが畑になっていたそうです。

今は博物館や美術館、文化会館、動物園と文化施設の殿堂といえる上野のお山ですが、そんな過去があるのですね。

 

 

最近のさつまいも事情

 おいしい品種

安納芋

安納芋の焼き芋

平和な今、さつまいもは甘くおいしい品種に改良されました。料理や好みに合わせてタイプを選ぶとよいと思います。

  • ほくほくタイプ 金時 紅あずま など  天ぷら・きんとん・煮物・焼き芋
  • しっとりタイプ 紅はるか    など  焼き芋・スイートポテト
  • ねっとりタイプ 安納芋     など  焼き芋

 

おいしい保存法は

さつまいもは収穫したてはまだ水分が多く本来の味になっていません。

芋掘りなどで入手したさつまいもは風通しが良い冷暗所で1~2週間ほど寝かせて熟成させましょう。糖度が増してよりおいしくなります。

  • 土はついたままで洗わない。洗うとさつまいもが傷みます
  • 通気性を持たせるため新聞紙に包んで段ボール箱などに入れておく
  • 冷蔵庫に入れない。高温では発芽し低温では腐りが出ます
  • 小さなものから使う。小さいものから傷んでいきます

 

甘くなる加熱温度帯は

焼き芋屋さんはリヤカーで売り歩きました

さつまいもはじっくり加熱すると甘みが増すといわれます。それはさつまいもにある酵素(βアミラーゼ)が加熱によって活性化し分子量が大きいでんぷんから分解されて、甘みのある麦芽糖に変化するためです。βアミラーゼは65~75℃の間で活発になります。

つまりゆっくり低温で加熱することで甘くなります。

 

最近は見なくなりましたが、リヤカーで売り歩いていた石焼き芋屋さんの加熱方法が理想的ということです。適度に水分が飛び、石の間に空間があることで湯と比べて比熱が低くなり急激にさつまいもの温度が上がることを防いでいます。

近年は八百屋さんやスーパーで遠赤外線の焼き芋機で加熱しているのを見かけますね。時間がかかりますがおいしい焼き芋に仕上がります。

家で食べるときもオーブンや蒸し鍋での加熱がおすすめです。

フライパンや電子レンジでの調理でも一気に加熱するのではなく、余熱時間を挟みながらの加熱で甘みを引き出すことができます。

 

 

さつまいもの用途は

  • 64㌫は食用
  • 20㌫はでんぷんに加工
  • アルコールの原料
  • 加工食品(菓子・干しいも等)

 

ビタミンCたっぷり!さつまいもの栄養と効果

さつまいもの主成分はでんぷんでエネルギー補助食品をして食べつがれてきました。

他は野菜と同じように

  • ビタミンC
  • カリウム
  • 食物繊維を多く含みます。

特に芋類のビタミンCはでんぷんの粒子に包まれて熱の影響を受けにくい特徴があります。

切り口から出る白い汁に含まれる「ヤラピン」は便通をよくする働きがあります。

カルシウムβ(ベーター)カロテンは芋類の中で最も多く含んでいます。

カルシウムは皮に多いので料理によっては皮ごと使うことをおすすめします。

生100gにつき さつまいも じゃがいも さといも
エネルギー(kcal) 134 76 58
たんぱく質(g) 1.2 1.8 1.5
炭水化物(g) 31.9 17.3 13.1
食物繊維(g) 2.2 8.9 2.3
カリウム(㎎) 480 410 640
カルシウム(㎎) 36 4 10
βーカロテン(μg) 28 2 5
ビタミンC(㎎) 29 28 6

皮はむいたもので比較しています。

 

救荒食から宇宙食へ

宇宙ステーション

長らく救荒食品として命を支えてきたさつまいもですが、栽培のしやすさから近年は宇宙ステーションでも自給作物として期待されているとか。宇宙での水耕栽培の開発が進められているそうです。

 

 

【まとめ】おいしいさつまいもが食べられることは幸せです

熱帯生まれのさつまいもの伝来と救荒食品として江戸時代に広まった背景を考えました。

最近では品種の改良が進み、おいしく甘いさつまいもが楽しめます。ビタミン類も豊富でヘルシーなさつまいもを秋の深まりとともに味わいたいものです。

 

お読みいただきありがとうございました。

【参考】

  • 小学館:新版食材図典
  • 群羊社:たべもの・食育図鑑
  • 高橋書店:あたらしい栄養学

☆管理栄養士 すずまり が書きました。

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管理栄養士のすずまりです。 食べものの文化的な側面など「おとなの食育」の観点から書いています。