秋に北海道での定置網漁で漁獲され、東日本の正月を彩るサケ。
なぜサケはきれいなサーモンピンク色なのでしょう。
サケはいったい白身の魚なのか、赤身の魚なのか、どちらなのでしょう?
目次
サケの身のサーモンピンクは白身?赤身?

サーモンピンクのバラ
「サーモンピンク」という名の色があるほど、サケの身はきれいな色をしています。
これはサケの食べている餌のためです。
サケが食べているオキアミなどの甲殻類に含まれるアスタキサンチンという色素がサケの筋肉に蓄積していくためです。ですので、まだ甲殻類を食べていない稚魚は赤くありません。
サケは「白身の魚」か、あるいは「赤身の魚」か区別すると「白身の魚」となります。
サケの栄養

オキアミ
サケは良質のたんぱく源として肉に負けない程の実力があります。
背が青い魚に多いDHAやIPAなどの脂肪酸も多く含まれています。
DHA(ドコサヘキサエン酸)不飽和脂肪酸の一種。マグロ、サバなどの魚油に多く含まれ、血栓・動脈硬化の予防などの効果が研究されている。
IPA(イコサペンタエン酸)1分子中に二重結合を5個含む不飽和脂肪酸。血小板凝集抑制作用を持つ。
アスタキサンチンの抗酸化作用が注目されています
サケの色素であるアスタキサンチンは熱に強いのが特徴です。私たちが食べると体内で野菜などのカロテン※同様ビタミンAとして働きます。
アスタキサンチンは強い抗酸化作用を持っていて、動脈硬化や心臓病、がんを予防する効果があると注目されています。
※カロテン 結晶は暗赤色。にんじんの根、バター、卵黄の黄色物資ルの主成分。緑葉中では葉緑素と共存し、動物体内では代謝されてビタミンAとなる。
(カロテンについてはにんじんの記事もご参照ください)
サケは皮も食べよう
サケの皮にはビタミンB2が豊富に含まれています。皮ごと食べましょう。
サケの薬膳効果
江戸時代の薬学書「本町食鑑(ほんちょうしょっかん)」には「中を温め、気を壮(さか)んにす」とあり、当時の別の書でも、「気を補いて力を増す」「筋骨強くする」とあります。江戸時代から胃腸を温め、気を補って骨や筋肉を強くするといった働きが認められていました。
サケとマスは同じ仲間?
サケもマスもどちらも生物学的にはサケの仲間でサケ科に分類されています。
英語ではサケもマスも区別しません。
生まれ育った川を下って海で生活するサケを「サーモン」、河川で生活を続け一生を淡水域で過ごすサケを「トラウト」と呼び分けているようです。
サケは世界各地で生息し、養殖も盛んです。
日本ではチリ・ノルウェー・アラスカ・カナダなどからサケやマスを輸入しています。
生まれた川に戻ります

サケは川で生まれ、海に下って北洋を回遊し、数年後に生まれた川に戻ります。
どうしてサケは生まれた川がわかるのか、長い間謎とされています。どうやら水のにおいや地形を記憶し、太陽コンパスや地球の磁気を利用しているのではないかといわれています。
回遊する時期や成熟度によってサケには異なる呼び方があります。
- 鮭児(ケイジ)小型・未熟で脂が多く数が少ない幻の魚として珍重されています
- 時知らず(トキシラズ)時鮭ともいわれています。春から夏にかけて漁獲される脂ののりがよく美味なサケ。
- 秋味(アキアジ)産卵前の秋に漁獲されるサケ。多くは新巻鮭にされる
- ブナザケ 川を上り始めた婚姻色の出たサケ。遡上の途中ではほとんど餌を食べないため味が劣るとされる
塩でおいしくなる新巻鮭

サケは一時期に大量に取れる魚です。冷凍冷蔵保存がなかった時代から保存方法がいろいろと工夫されてきました。
代表的なのは塩蔵です。えらと内臓を出して塩に漬けます。保存性が高まるだけでなくたんぱく質が変性してアミノ酸などのうま味成分が増しておいしくなります。
- 山漬け 大量の塩で漬けたもの すごく塩辛く、常温保存ができるほどです
- 新巻 山漬けの簡易版 塩分濃度が低いので長期保存には向かない
- スモークサーモン えらと内臓をのぞいて塩漬けにし燻製にしたもの
サケの選び方
ウロコは銀色に光り、皮に張りがあるもの、身がしまっているものが新鮮です。
切り身は身が透き通ったサーモンピンクのものを選びましょう。
天然物は生で食べてはいけません

鮭の刺身
天然のサケは寄生虫がいる恐れがあります。生食はさけた方がいいでしょう。
一定期間冷凍させたものは大丈夫です。寒さが厳しい北海道では昔から凍っているサケを刺身にして「ルイベ」とよんで食べていました。
養殖のサケは餌や水槽の衛生管理がされているので新鮮なものは刺身でも食べられます。
近頃は寿司屋でサケは大人気だそうです。
【まとめ】サケのサーモンピンクは餌の色が筋肉に蓄積したもの
サケは本来は白身の魚ですが、餌である甲殻類の色が筋肉に蓄積してサーモンピンクとよばれるきれいな色に成長します。
色素のアスタキサンチンは私たちの体内でビタミンAとして働いてくれます。
日本人のサケの消費量は世界でも有数です。
サケはアイヌの人々に「神の魚」とよばれて大切にされてきました。身や卵だけでなく、皮や骨まで余すところなく利用しています。
江戸時代から薬学書に登場していたサケをおいしくいただきましょう。
お読みいただき、ありがとうございます。
〈参考〉
- 群羊社:たべもの・食育図鑑
- 西東社:薬膳・漢方食材&食べ合わせ手帳
- 小学館:新版食材図典
☆管理栄養士 すずまり が書きました。
↓ブログランキングに参加しています。よろしかったら応援お願いします。
コメントを残す