日本ではりんごとの付き合いは浅く明治以降からです。
私が幼いころはりんごの品種は、国光(こっこう)と紅玉(こうぎょく)、それにインドりんご、デリシャスくらいでした。
昨今は生産者の努力で多種多様なおいしいりんごが出回っていますね。
その中で、おいしさの目安として「蜜入りりんご」があります。
蜜入りりんごの蜜は注射?いいえ生理作用でできます

蜜入りりんごは甘くておいしいですね。
子供の頃、蜜はりんごに注射をして作ると聞いたことがあり、「でも注射のあとがないなあ」と思いながらも信じていました。
りんごの蜜って熟していく上でできる生理作用で完熟のサインだそうです。
りんごの蜜ができる不思議をみていきましょう。
蜜入りりんごができる機序は
①光合成で葉にデンプンが作られる

りんごの葉
葉で作られた光合成産物は炭水化物(デンプン)として生育に使われます。
りんごの場合は分子量の大きいデンプンがりんごの酵素の働きでソルビトールという水に溶けやすい、一種の糖アルコールに変わって枝を通して実の方に送り込まれます。
種が完成した頃合いをみて同時に果実がおいしく甘くなります。鳥にりんごを食べてもらって種を遠くに運んでもらうためにおいしくなるのですね。
りんごが甘くなるのもすべて光合成の力だと思うと自然の力、りんごの生命力に感じ入ってしまいます。
②りんごの実に送られショ糖に換わり熟していきます
りんごの実に送り込まれたソルビトールは、そこにある酵素の働きで低分子の果糖やブドウ糖に変わって細胞の液胞内に貯蔵されます。その中で果糖とブドウ糖は次第に結合してさらに甘いショ糖として貯留します。
りんごの成熟が進むにつれて、細胞内はショ糖で一杯になります。
③ソルビトールであふれて蜜になります
熟成が進むとだんだんとソルビトールを果糖とブドウとに分解する酵素の働きが弱まってきます。すると葉から送られてくるソルビトールがそのままの形でりんごの実の細胞と細胞の間(細胞間隙さいぼうかんげき)を埋めていくようになります。そうなるとその部分は水浸し状態になります。これがりんごの蜜の正体です。
りんごの蜜の部分の甘さは?

さて蜜入りりんごはおいしいですが、透明感のある蜜のところはことさら甘いわけではありません。
りんごの実は光合成で作られたデンプンがりんごにある酵素によって分子量の小さい糖に分解され、ショ糖(砂糖)に合成されます。ショ糖は天然の甘味料として、果糖に次いで甘い物質です。ところが蜜の正体のソルビトールはショ糖の60%程度の甘みとされています。
ですから、蜜のところより、まわりの方が甘いわけです。
でも、蜜=はちみつのイメージもあり、透明感のある蜜のところはおいしそうに感じますね。
蜜の入り方は品種によって違います
完熟しても蜜が入らない品種もあります。
蜜が入る品種では、蜜がたくさん入ってるほど良く熟しているということになります。食味も良くなります。
しかし、何事も過ぎたるは及ばざるがごとしで、過剰に蜜が入ったものは発酵臭がしてきます。さらに日持ちが劣ってきます。
程よく入った蜜も長く置くと水分が蒸発して徐々にまわりの果肉に吸収されて行きます。
その結果、シャキシャキした歯ごたえやみずみずしさが失われます。
このため蜜入りりんごは新鮮なうちにおいしくいただくことが良いようです。
蜜入りりんごの代表品種はふじ
蜜が入るのは品種にもよりますが、時期にも左右されるそうです。蜜が入りやすい品種はふじ・スターキング・ゴールデンデリシャスの3品種といわれています。
特に人気のあるのがふじ

ふじりんご
1939年(昭和14年)に国光とゴールデンデリシャスを掛け合わせて育成した品種です。
1962年に命名して登録されました。
果実は熟すと300g以上になり黄色い地に赤色の縞状に色づきます。
収穫は長野県で10月中旬から、東北地方では11月上・中旬から始まり11月中に収穫が終わります。晩成品種といえます。
果肉は固くパリパリとした歯ごたえです。
果汁がとても多く、また糖度が高く酸味が少ないところから商品として栽培される品種の中でもっとも食味が優れているといわれています。
日持ちも全栽培品種の中でも際だって長い部類です。
低温貯蔵されたものは翌年の7月~8月まで出荷できます。
日本のりんご生産量の約53%を占める最重要品種で人気も高いですね。世界のりんご生産国でもふじの栽培が増えています。
【まとめ】りんごの蜜はソルビトールです

りんごの蜜は葉が光合成してできたデンプンを運搬しやすいソルビトールという糖アルコールに変えて果実に届けることでできる生理作用でした。
蜜入りりんごは完熟のサインです。完熟が過ぎると食味が悪くなります。
また、収穫した蜜入りりんごは長くおくと蜜の部分が吸収されてしまいます。さらに、水分も蒸発してくるのでシャキシャキ感・パリパリ感がなくなります。
蜜入りりんごは新鮮なうちにおいしくいただきましょう。
そしてりんごの効果もたくさん取り入れたいですね。
りんごの効果については以下の記事もご覧ください。
お読みいただきありがとうございました。
〈参考〉
小学館:新版食材図典
☆管理栄養士 すずまり が書きました。
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