りんごは4,000年以上前から栽培されていたといわれるほど歴史のある果物です。世界では15,000種もの品種があるともいわれているりんごはことわざもとてもたくさんあります。
外国ではりんごにまつわるたくさんのことわざがありますが、日本には見当たりません。それは付き合ってきた歴史が違うからだといえます。
りんごのことわざをみていきましょう。
目次
りんごのことわざ-1 一日1個のりんごは医者を遠ざける(イギリス)

北方を除いてヨーロッパに古くからあるりんごの効能は経験からよく知っていたといえるでしょう。
風邪で食欲がないときや胃腸が弱っているときにすりおろし汁を飲む民間療法があります。
便秘にも下痢にも有効です。
日本の柿が古くから薬としても大事に育てられ全国に広がっていったのと同じような経緯を持っているのではないでしょうか。
柿については以下の記事もご覧ください。
りんごのことわざ-2 毎日のりんご1個は医者の費用を節約できる(スペイン)
このことわざも-1と同様です。
りんごのことわざ-3 盗んだりんごは甘いーイギリス
盗むという心の中での動揺、葛藤を押えて行動に移すスリルに満ちた行為のあとに味わうりんごは、ことのほか甘く感じるという意味です。
味は同じなのに人によって、またそのときの状況によって味が変わる、人の心の妙をついたことわざです。
りんごのことわざ-4 良いりんごは虫に食われるーロシア

おいしいりんごは虫がよく知っていて、もぐ前に虫が食べてしまうという意味です。
人間社会に当てはめて、他の意味も隠されています。
良いもの、能力があるものは痛めつけられて、消える運命にある「佳人薄命」の意味も持っています。「出る杭(くい)は打たれる」と同様のことでしょう。日本流に取ると、「虫がつく」は男女間のことになりますが、「佳人薄命」の意味はちょっと恐ろしい。
りんごのことわざ-5 赤いりんごは虫食いりんご(ブルガリア)
見た目はおいしそうでも、中は虫が食っていることもあるからご用心。見た目にとらわれてはいけないという戒めです。
りんごのことわざ-6 赤いりんごと敵の友情は信じてはいけない(パキスタン)
このことわざも表面だけを見て判断してはいけないという格言ですね。
りんごのことわざ-7 りんごはりんごの木の近くに落ちる(チェコスロバア・ロシア)

自然の状態ではりんごは熟すと、その木の下に落ちます。そこからは同じ形質のりんごの木が育っていきます。
日本でいうところの「蛙の子は蛙」と同じですね。良いところも、悪いところも親に似ます。
しかし「蛙の子は蛙」と比べると、ひとひねりもふたひねりもあることわざだと感じます。
りんごのことわざ-8 りんごの実はりんごの木から遠くへは落ちない(フィンランド)
このことわざも-7と同様です。「この親にしてこの子あり」ということわざです。
りんごのことわざ-9 りんごの実はりんごの木から遠くへは転がらない(リトアニア)
-7 -8 同様、「子供を見れば親の顔がわかる」という意味です。ヨーロッパに同じようなことわざが多いことに驚きますね。
こんなに言われてはたまらない。だから果実は鳥に食べてもらって、糞(ふん)に混じって種を遠くへ運んでもらうのですね。 そのためにもおいしく進化してきたのでしょう。
りんごのことわざ-10 良いりんごはよく糞の上に落ちる(ナイジェリア)
良く熟して赤くなり、ことさらおいしそうなりんごが、こともあろうに、木の下にあった糞の上に落ちてしまって食べられなくなってしまった。ということわざです。
夭折(ようせつ)に対して無念さやお悔やみの気持ちを表すときの言葉だそうです。
りんごのことわざ-11 赤いりんごに投石者、あとを絶たず(トルコ)

手の届かないところに実っている、おいしそうな赤いりんごに人々は石を投げて落とそうとします。青いりんごにはなにもしません。
そこから優れた者はとかく妬みの的になりやすいということを表しています。
「出る杭は打たれる」と意味は同じです。
りんごのことわざ-12 りんごの木は根に虫がいると衰える(ラトビア)
このことわざはりんごの木を家族になぞらえたもので、夫婦の絆が子供の成長に影響することを表しているそうです。お父さんとお母さんがりんごの木の根っこを表し、ここに虫が居着いて養分や水分が枝葉にいかないようになると、木はやがて枯れてしまいます。家庭が崩壊するということですね。
ちょっと日本にはない比喩ではないでしょうか。
りんごのことわざ-13 まるいものすべてがりんごと言うわけではない (ジプシー)
わかりやすいと言えばわかりやすいことわざですね。このことわざからは、りんごがとても身近な食べものとして、そしていろいろな含蓄を持った食べものなのだということを感じます。
りんごのことわざが日本にはない不思議

りんごの花
欧州各国にはりんごにまつわることわざがたくさんあり、驚くほどです。
国によって言い回しが多少違いますが似たようなことが伝わっていますね。
日本にりんごが伝わったのは19世紀半ばで庶民が食べるようになったのは明治以後です。日本におけるりんごの歴史は浅いのでことわざが作られていないのでしょう。
江戸時代の川柳に柿や梨は詠まれてもりんごはありません。
禁断の果実はりんご?

旧約聖書の創世記に出てくるアダムとイブのお話の中の果物、食べても触れてもいけないと言われた知恵を知る果実はりんごがイメージされますが、りんごとは書いてありません。絵画に描かれる果実がりんごなのは画家の想像だそうです。
これだけのことわざを醸(かも)すほど、りんごとの付き合いが長いのですから宗教画に登場するのもうなずけますね。
この禁断の果実は 宗教家の間ではイチジクではないかというお話もあるそうです。
ともあれ、食べるだけではなく触れてもいけないといわれた果実を、ヘビにそそのかされて手に取り食べてしまったために、楽園を追われて死を運命付けられた情景は失楽園のお話として、たくさんの画家により芸術作品として描かれています。
【まとめ】りんごのことわざが日本にないのは付き合いが浅いから
りんごのことわざをみてきました。
欧州ではりんごは古い付き合い、日本は明治以降の付き合いなので、その歴史の差がことわざの出現の差になっています。
でも、りんごは日本の気候に合って、おいしい品種がたくさんあります。
おいしいりんごについて、以下の記事もご覧ください。
小学校で「りんごは寒い地方、みかんは暖かい地方でできる」と習いました。つまり、明治に広まったりんごがみかんとともに秋冬の果物のツートップになっているといえるのではないでしょうか。
ことわざはありませんが、おいしいりんごが日本にはあります。外国でも評判がよいそうです。
お読みいただきありがとうございました。
〈参考〉
- 全国学校給食協会:食のことわざ春夏秋冬
- ポプラ社:食育に役立つ食材図鑑2くだもの
- 家の光協会:和の薬膳食材手帳
☆管理栄養士 すずまり が書きました。
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