れんこんは泥の中に根を張り、美しい花を咲かせます。その美しさは俗世を超えた極楽浄土の象徴となっています。
また、大賀一郎博士によって泥炭層から見つかった2000年前の蓮(はす)の種を栽培し開花したことから、生命力の強さも話題になりました。
中国ではれんこんは不老食とされています。
日本でもれんこんは縁起がよい食べ物とされて正月やお祝いに欠かせません。
縁起がいいだけじゃない、実力ある、れんこんの栄養をみてみましょう。
目次
れんこんの栄養 びっくり!ビタミンCはみかんの1.5倍

れんこんの主成分はでんぷんですが、実はビタミンCもたっぷりです。
生の食品 100g中に ビタミンCは
- れんこん 48mg
- みかん 32mg
- レタス 5mg
- ほうれん草 35mg
ビタミンCは風邪の予防や肌の調子を整えるだけでなく、体内の活性酸素を除去して老化やがんの予防にも有効とされています。
れんこんの栄養 切ると黒くなるアクもポリフェノール

むいたり切ったりしたれんこんは時間が経つと黒くなります。
これはれんこんに含まれるタンニンと鉄が空気に触れて酸化され、黒褐色の物質に変わるためです。
れんこんの他にもごぼうやなす、ウドなども黒くなります。
これらの野菜に含まれるタンニンやクロロゲン酸、フラボノイドなどはフェノール類と呼ばれます。
黒くなるのは酵素の働きによります。この酵素は水や食塩水に溶けやすく、また酸によって活動が抑えられます。熱を加えると酵素は働かなくなります。
そこで日本料理などできれいな白に仕上げたいときは水や食塩水、酢水にさらしたり、下ゆでしたりして色止めをします。
でも、このポリフェノールはエグミやアクであると同時に野菜独特の色や風味、味に特徴を持たせています。
またポリフェノールは活性酸素を抑えて病気の予防にも役立ちますので、このアクを抜きすぎないようにすることがよいようです。
アクといわれて困りもののように言われ、取り除かれていましたが有用性がだんだんとわかってきています。
れんこんの栄養 食物繊維もあります
れんこんの主成分はでんぷんですが、消化吸収されない食物繊維も含まれています。
食物繊維は腸内環境を整えます。
蓮根を切ると糸を引きます。
在来種のれんこんは特によく糸を引くようです。糸を引いてそれが切れるとちぢれて、なにかナイロンの糸のように見えますが、なめこや里芋のヌメリと同じようなものだそうです。
収穫は大変です
在来種の日本れんこんはすらりと長く、味も濃厚でおいしいのですが、根が深くて収穫が大変です。
そのため、中国から導入され、品種が改良された地下茎が浅い「中国れんこん」が一般的に流通しています。
もちろん「中国れんこん」だから「収穫が楽」ということはありません。正月用として需要が増える12月下旬には寒風の中でウエットスーツを着て、胸まで泥田に浸かりながら太いジャバラホースで水圧をかけて掘り出しています。
れんこんの穴は全部で10個

れんこんは太さや長さにかかわらず、だいたいが中央に1個、まわりに9個の穴があります。
れんこんは葉や茎が水上にあります。茎にも小さいですが穴があり、くだのように酸素を地下茎に運ぶ役割をしています。
なお、漢字では「蓮根」と書きます。「蓮(はす)」は花が咲き終わった後の花托が「蜂の巣」に似ていて「蜂巣(はちす)」と呼ばれていたのが略されて「はす」になったそうです。
辛子蓮根は細川家の家紋、九曜紋に似ている

熊本県の郷土料理:辛子蓮根
熊本県の郷土料理に「辛子蓮根」があります。
病弱の熊本藩主、細川忠利のために作った「辛子蓮根」の断面が細川家の家紋、九曜紋(くようもん)に・・・そう言われれば似ていますね。
そのため、この「辛子蓮根」は門外不出とされていたそうです。
最初に作ったれんこんは熊本城を築城する際、加藤清正が非常食として外堀に栽培していたれんこんだったそうです。
詰め物は辛くもあり、甘くもありで、れんこんの歯触りと相まっておいしくいただいたことがあります。
れんこんは受験生にも食べさせたい

正月のお節料理やお祝いで作るちらし寿司にはれんこんがつきものです。
穴が空いているので「先がよく見通せる」という縁起をかついでいます。
れんこんにはビタミンCも豊富ですし、「先が見通せる」の縁起かつぎからも受験生にうれしい食材ではないでしょうか。プレッシャーにならない程度に縁起をかついであげてください。
煮炊きに鉄鍋は使わない
鉄製の鍋で料理をするとれんこんのタンニンなどが鉄と反応して黒くなります。
料理はステンレスの鍋などをつかうようにしましょう。
【まとめ】ビタミンCが多いれんこん
れんこんはビタミンCが意外に多く、アクもポリフェノールとして活性酸素を押える等の働きをしています。
また穴があり、「先を見通せる」の縁起担ぎから正月のお節料理やお祝いの料理に欠かせないものとなっています。
切り口が花のように見えるからか、料理に一切れ、れんこを加えると華やかさが増すように思います。
れんこんには人の心を引き寄せるものがあるようです。
それでこその「極楽浄土の象徴」なのかもしれません。
お読みいただきありがとうございました。
☆文中の食品名および栄養価は「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」「同 追補2016年」「同 追補2017年」「同 追補2018年」に準拠しています。
〈参考〉
- 群羊社:たべもの・食育図鑑
- NHK出版:からだのための食材大全
- 西東社:薬膳・漢方食材&食べ合わせ手帳
☆管理栄養士 すずまり が書きました。
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