世界の各国で賞味されている牡蠣(カキ)はホタテと並ぶ二枚貝の横綱です。
世界各国で養殖の技術が確立され、食用に流通しています。
日本で市場に流通しているものはほとんどが養殖で安定した価格で取引されています。
成分に特徴があり、海のミルクとも呼ばれています。
目次
牡蠣(カキ)の愛称は「海のミルク」

牡蠣(カキ)には海のミルクの愛称があります。
それは牛乳同様「グルコーゲン」の含有量が多いから
そこでエネルギーや炭水化物、無機質(ミネラル)を牛乳と比べてみました。
[カキと牛乳の比較の表]
100g中 | 牡蠣(カキ) | 牛乳 |
エネルギー(kcal) | 70 | 67 |
水分(g) | 85.0 | 87.4 |
たんぱく質(g) | 6.9 | 3.3 |
脂質(g) | 2.2 | 3.8 |
炭水化物(g) | 4.9 | 4.8 |
ナトリウム(㎎) | 460 | 41 |
カリウム(㎎) | 190 | 150 |
カルシウム(㎎) | 84 | 110 |
マグネシウム(㎎) | 65 | 10 |
リン(㎎) | 100 | 93 |
鉄(㎎) | 2.1 | 0.02 |
亜鉛(㎎) | 14.5 | 0.4 |
銅(㎎) | 1.04 | 0.01 |
エネルギーや水分、脂質、炭水化物、カリウム、カルシウムなどの含有量が似ていますね。
この炭水化物はブドウ糖が多数結合したものです。でんぷんが植物性の貯蔵多糖類なのに対して動物性の貯蔵多糖類と呼ばれます。
牡蠣(カキ)のグリコーゲンの量は季節によっても変動し最盛期の2月が最も多く、3月になると減少に転じるそうです。また、冬と夏とでは約10倍も違うのでやはり旬の時期に食べたいですね。
牡蠣(カキ)の栄養と効果は
貧血に頼もしい
月経のある女性は貧血になりやすい状態にあります。

私も婦人科系の通院をしていたころは貧血に悩まされました。貧血は徐々に進むため、なかなか症状として現れません。疲れやすと思っていたら貧血が進んでいたということもあります。
月経のある女性は普段から造血作用のある食べものを意識して摂っていただきたいですね。
牡蠣(カキ)には吸収の良い有機の鉄の他、銅が多く含まれています。他にも葉酸(ようさん)・ビタミンB12も豊富で造血に働いてくれます。
牡蠣(カキ)を食べた後は疲労感も軽減されているかもしれませんね。
肝機能を高めてアルコール分解にも美肌効果にも

グリコーゲンやタウリン、ビタミンB12は肝機能を高める働きがあります。
肝機能が高まると、うれしいのはお酒を飲んだ時だけではありません。解読作用はアルコールだけでなく、美肌にも効果があるのです。牡蠣(カキ)は疲れた肝臓にやさしく作用します。
アルコール好きな方にも美容に気をつかう方にもうれしい効果です。
二日酔いの栄養ドリンクなどにもよく使われる「タウリン」ですが、お酒をいただくときに牡蠣(カキ)をお供にすると安心。飲みすぎには注意!ですが…
食品の中で一番多い亜鉛の働き

牡蠣(カキ)には亜鉛が多く含まれていて、その含有量は食品一とも言われています。
この亜鉛は体内ではたんぱく質と結合し多くの補酵素の成分になります。
新陳代謝に欠かせない栄養素として活躍しています。
- 細胞の新生を促進
- 成長促進
- 性機能の発達・維持
- 味覚の維持
- 血糖値を下げるインスリンの合成にも必要です。
欠乏すると免疫力が低下します
過剰症は通常はみられません。
タウリンが多い
タウリンはアミノ酸の一種です。
- 血中脂質のバランスを改選して、血漿中のコレステロールを下げる
- 肝機能を高める
- 血圧を下げる
など、多くの作用があります.
牡蠣(カキ)はビタミンCと一緒に食べて吸収率アップ!
また、牡蠣に含まれる鉄やタウリンは、ビタミンCと合わせて摂ると吸収率がアップ! 生牡蠣にレモンを絞って食べることで、自然と吸収がよくなっているんですね。
牡蠣(カキ)の薬膳効果
カルシウムが多いこともあり、精神を落ち着かせる作用があるといわれます。そのためイライラや不安感、憂うつを解消する効果に優れています。ストレスをはね返す強い心身を作る作用があります。
牡蠣(カキ)とノロウイスル

牡蠣(カキ)はおいしくて栄養もたっぷりのすばらしい食材ですが、ノロウイルスの話を避けて通れないのも、特徴のひとつです。
ノロウイルスは感染性胃腸炎の原因ウイルスです。小さくて球形の形をしています。
猛烈な感染力をもっています。
ノロウイルスは人の腸管の中だけでしか増殖ができないそうです。
ノロウイルスに感染した人の糞便が下水を流れて処理施設に行きます。
処理施設では下水をきれいにして消毒もして河川に戻します。
このときノロウイルスは99.5%程度が除去されるそうです。でも、すり抜けた0.5%が海に流れ着きます。
二枚貝は海水を大量に吸い込んで栄養分を濾過します。このとき、ノロウイルスが存在すれば、一緒に吸い込みます。寒い季節は二枚貝も活性が低下するようで、吸い込んだノロウイルスが肝臓に蓄積していきます。貝の肝臓とは黒い部分ですね。肝臓はミネラルなどの栄養分が豊富ですが、ありがたくない物質も溜まってしまう臓器です。
なお、ノロウイルスはとても小さいので電子顕微鏡でないと見つけられません。
まだ光学顕微鏡が主流だった時代はノロウイルスの感染症がわかりませんでした。
そこで、「冬場の牡蠣(カキ)にあたる」とか、「今年の風邪はおなかに来てすごかった。家族で枕を並べてしまった」という事態になっていました。
牡蠣(カキ)には「生食用」と「加熱用」があります
新鮮な生牡蠣(カキ)にレモンを搾ってチュルンといただく醍醐味は格別のものがあるようです。
牡蠣(カキ)はスーパーなどではパックに入って売っていることがあり、よく見ると「加熱用」と「生食用」とあります。生食用の方が新鮮なのでしょうか?
それはノロウイルス対策に関係しています。
生食用牡蠣(カキ)
-150x150.jpg)
生食用の牡蠣は出荷の前に殺菌された海水に15~20時間つけておき、海で食べてきたものをすべて吐き出させます。
こうして、菌を完全に除去する処理をしているので「生」でも食べることができます
他にも河口から離れていて下水の流入の心配がない海域で育った牡蠣では、自主検査の結果シーズンを通して、全くノロウイルスが検出されない産地もたくさんあるようです。
生食用牡蠣はノロウイルスだけでなく、腸炎ビブリオ、大腸菌、その他の細菌についてもクリアしている必要がありますが、日本のまわりにもまだまだきれいな海があるということですね。
加熱用牡蠣(カキ)
-150x150.jpg)
「生食用」のように、菌を完全に殺す処理をしないで出荷しているものです。
でも、生食用のように絶食にさせるような処理をしていないので消耗していない状態のものを食べられる利点があります。
鍋ものやフライ等、加熱して食べる場合は加熱用を選びましょう。
その際はパックの水が飛び散らないように気をつけましょう。
使ったボールやザルなど、調理器具はしっかり洗います。次の工程に移る際には手を石けんでしっかり洗います。
加熱は85℃以上で1分以上とされています。黒い部分がしっかり固まっていれば大丈夫でしょう。
牡蠣(カキ)が食べられない職業がある!

ノロウイルスは感染しても、症状がでないことがままあるそうです。それを不顕(ふけん)性感染者と呼んでいます。
症状が出なくても糞便からウイルスは排出します。気がつかないまま1ヶ月近くウイルスを出し続けることがあるそうで、そこがノロウイルスのやっかいなところです。
そこで集団給食に携わる関係者は牡蠣、特に生牡蠣を食べないように保健所から指導を受けます。
私も関係者として生牡蠣は食べませんでした。牡蠣を使った鍋でもよくよく加熱したものをシーズンに1~2個いただいたくらい。牡蠣の良さを味わえず残念なことです。
牡蠣(カキ)の旬 Rのつく月は・・・
欧米では「R」のつかない月は食べてはいけないといわれます。
「R」がつかない月は北半球ではマガキの牡蠣の産卵時期と一致。うま味成分を使い果たして味が落ちるためですね。
5月・6月・7月・8月の暑いシーズンはRがつきません。わかりやすい教えですね。
マガキの旬は11月から3月の寒い時期です。
イワガキがおいしい時期は5月から8月です。
牡蠣(カキ)の種類
日本の沿岸には22種ほどの牡蠣が知られていますが、市場に流通されるものはほとんどが養殖のマガキです。マガキの他にイワガキも知られています。
マガキ

日本で流通している牡蠣は養殖のマガキがほとんどです。
養殖は大正時代から始められ、全国に広がりました。
産地としては広島県・宮城県・岩手県・北海道厚岸(あっけし)などが有名です。
イワガキ

大型の牡蠣です。殻が厚くて大きい割には身が小さいです。
夏が旬なので夏牡蠣ともよばれます。養殖は少なく天然物が多いため希少価値から価格も高めです。
陸奥湾以南から九州まで分布しています。
牡蠣(カキ)が痔(じ)を誘発?
痔を一度患ったことがある人は牡蠣(カキ)を食べることで痔を誘発しやすいといわれています。
様子を見ながら食べましょう。
お読みいただきありがとうございました。
〈参考〉
- 小学館:新版食材図典
- 群羊社:たべもの・食育図鑑
- 家の光協会:和の薬膳食材手帳
- 西東社:薬膳・漢方食材&食べ合わせ手帳
- 高橋書店:あたらしい栄養学
☆管理栄養士 すずまり が書きました。
☆文中の食品名および栄養価は「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」「同 追補2016年」「同 追補2017年」「同 追補2018年」に準拠しています。
コメントを残す