秋のお彼岸の頃には空気が軽くなり爽やかになります。「お彼岸の中日」といわれる「春分の日」・「秋分の日」は太陽が真東から昇り真西に沈み、昼と夜の長さが同じになる区切りの日です。この日はお墓参りをしてご先祖に思いをはせ、穏やかな一日にしたいものです。
年中行事は「食」と密接にかかっわています。おはぎと秋のお彼岸についてみていきましょう。
おはぎ・ぼたもちについては下記の記事もご参照ください
目次
「おはぎ」は秋のお彼岸にお供えします
お彼岸が近づくとお仏壇におそなえする落雁と呼ばれる米粉や水あめ・さとうを木枠に入れて作った干菓子が売り出されます。これはお彼岸の何日か前からお供えし、お彼岸が終わるとお下がりを家族で分けていただきます。このお菓子はどちらかというとお仏壇の飾りのように感じます。
それに対して「おはぎ」は見るからにずっしりとした生菓子です。
炊き上がったもち米をすりこぎで軽くつき「半殺し」という状態にして丸めたものにあんこをからませて作ります。
昔は家庭で作りお仏壇に供えつつ、昼ご飯代わりにもいただいたもので、まさしく「彼岸の食」でした。母親の作ったおはぎはあんこが柔らかく、お店のような見栄えではありませんでしたが食べやすく、おいしかったのを思い出します。
おはぎとぼたもちは同じもの
おはぎは萩の花、ぼたもちは牡丹の花からついた名前です。
萩の花は秋の花、牡丹は春の花ですね。
もちろん地域による呼び方の違いや「こしあん」「粒あん」の区別などで一律に言うことはできませんが、季節の花を取り入れた呼び名は趣きがあるものです。
年に2回のお彼岸に貴重な砂糖をふんだんに使って作った「おはぎ」「ぼたもち」は先祖の霊の供養とともに
- 春には豊穣を願い
- 秋には収穫に感謝
という思いを込めて神に捧げるという側面もあります。
「あずき」と「もち米」に込めた願いと呪術
あずきを用いたのは「赤飯」を作るのと同じ理由で、美しいあずきの赤い色が「魔を遠ざける」と同時に邪気を払う食べ物としてご先祖様にお供えされてきました。
また「もち米」と「あんこ」を「合わせる」語呂から、ご先祖様の心と自分たちの心を「合わせる」という思いもあります。
- あずきは魔を遠ざける
- 米は五穀豊穣を意味する
農耕民族である私たちの祖先は自然に逆らわず、しかし生活にさりげなく呪術を取り入れて日々の安寧を願っていたのでしょう。
赤飯もおはぎ・ぼたもちも材料が「米」と「あずき」である点は一緒です。年中行事の折々で食される行事食に込めた先祖の気持ちに思いをはせて大切に食べつないでいきたいものです。
あずきの種類と効能

あずきは粒の大きさで大納言あずきと普通あずきに分けられます。
- 大納言あずき 5.5mmのフルイのアミに残った大粒のもの 皮が破れにくいので甘納豆や小倉あんに用いられる
- 普通あずき 大納言あずきより小粒で4.2mm以上のもの 北海道の十勝のもので作ったあんは風味が良いとされる
あずきは古代は薬として利用しました。
呪術の対象にもなった外皮の美しい色は紅茶と同様のカテキンが含まれています。
カテキンはポリフェノールの一種で体内の過酸化脂質を抑え、発がん抑制効果があります。
外皮にはサポニンもあります。サポニンには溶血作用があり血栓を溶かす働きがあります。また、抗酸化力もあります。
鉄分、ビタミンE・ビタミンB1・B2・B6・カリウムが期待できます。
以前は商家ではついたちと15日にあずきご飯やあずきがゆを食べる習慣があったようです。あずきに含まれるさまざまな栄養価を期待して従業員の健康を守っていたのでしょう。
ビタミン剤やサプリメントがない時代の、経験から導き出された知恵といえるでしょう。
彼岸の歴史

「お彼岸」は自然と結びついた日本独自の行事です。虫の声が響き、秋の気配が近くなったと感じられる秋分の日を中心とした1週間を「秋彼岸」といいます。
秋分の日の三日前を「彼岸の入り」三日後を「彼岸明け」といい秋分の日を「彼岸の中日」と呼んでいます。
日本で初めて彼岸会(ひがんえ)を行ったのは平安時代の桓武天皇といわれています。政治上の争いから自信に向けられた弟の怨霊を鎮め、天然痘の流行を押えるために彼岸会を開催したといわれています。
今に伝わる多くの行事同様、江戸時代には「お彼岸」の行事は庶民の間に広まりました。お彼岸の中日を「春分の日」「秋分の日」と制定したのは1878年、明治11年のことで、以来仏教上のの行事として行われています。
私は以前、外国人の英語の先生に、「暑さ寒さも彼岸までですよ」と言ったところ、電子辞書ですぐに調べた先生は
「ヒ、ガ~ン? なぜ 彼(かれ)?」と言われて説明に困ったことがありました。
「彼岸」は川の向こう岸で、こちら側の現世は「此岸-しがん」です。
【まとめ】秋の彼岸にはおはぎをお供えします

地方によりさまざまな「いわれ」はあるものの、「おはぎ」も「ぼたもち」もあずき・もち米・砂糖を使った同じものと考えてよいでしょう。
日本独自の古くから続けられっている彼岸の行事を次の世代につなげたいものですね。
お読みくださりありがとうございました。
〈参考〉
- 宝島社:別冊宝島1367号 入門歳時記ライフ
- 筑波書房:「年中行事から食育」の経済学
☆管理栄養士 すずまり が書きました。
↓ブログランキングに参加しています。よろしかったら応援お願いします。
コメントを残す