スタミナ野菜の代表格、にんにくはあの強い香りがないと成り立たない料理がある一方で高い強壮効果が期待される薬用植物でもあります。
確かな強壮作用があることから仏教のお坊さんは食べることが禁じられることもあったそうです。
小さな白い球根野菜にんにくの効果効能をみてみましょう。
にんにくの効果と効能
独特の強い香りは硫化アリル類のアリシンによるものです。
アリシンはたまねぎにも含まれています。
アリシンには風邪や気管支炎の原因となるブドウ球菌や連鎖球菌を殺す抗菌力があります。コレラ菌やチフス菌にも有効だとか。すごい抗菌力ですね。
疲労回復にも効果があり、新陳代謝をよくするスコルジニンも含んでいるため、風邪の予防と撃退にぴったりです。
体を温めますので冷え性の改善にも役立ちます。
にんにく自身にもビタミンB1が含まれていますが、他の食材のビタミンB1の吸収も高めます。ビタミンB1は糖質を分解してエネルギーに変える際になくてはならないビタミンで、このビタミンがないといくらご飯を食べてもエネルギーにかわりません。
豚肉にはビタミンB1がたくさん含まれています。豚肉の焼き肉でにんにくが入ったタレをつけるのはとても理にかなったことです。
豚肉はビタミンB1がたっぷり!スタミナ補給・疲労回復効果に○
1990年にアメリカの国立がん研究所により、がんの予防効果が期待される食べものとしてデザイナーズフーズ計画のトップにあげられました。(その後この計画はなくなっています)
(デザイナーズフーズプログラムについてはブロッコリーの記事をご参照ください)
にんにくが血液をサラサラにするのは含硫(がんりゅう)アミノ酸の働きです

にんにくの特徴的なにおいはいくつかの香りが混合していますが、それらはいずれも硫黄(いおう)原子を含む含硫アミノ酸という化合物です。
これらの硫黄を含む化合物は血小板の凝集を抑える作用や、血小板なども巻き込んで固まりを作るフィブリノーゲンを減少させて血が固まりにくくする作用があります。
さらに、含硫化合物は血管の中の繊維質を溶かす作用を活性化することもわかっています。これらの作用で血液がサラサラ流れ、血液の固まりが原因でおこる心筋梗塞や脳梗塞の予防に効果をあげます。
血管の中で血栓ができる過程でアラキドン酸カスケードが作用します。
にんにくはこのアラキドン酸カスケードの作用を妨害して血小板と血小板が集まって血栓に成長するのを防ぐことがわかっています。
このほかにもにんにくにはフィブリノーゲンを減らす作用を持つ成分が含まれています。フィブリノーゲンは出血の際に血が血餅(けっぺい)になって固まり、止血することに働きますが、それが血管の中で行われると大変なことです。命にかかわってします。にんにくは血栓形成の抑制に非常に有効と言われています。
にんにくの歴史

にんにく畑
原産地は中央アジア、エジプトでは古くから栽培されていました。
中国には漢の時代に入りました。
日本ににんにくが来たのは8世紀頃だそうです。その後にんにくは各家庭で薬用として植えられていました。
香辛料として日々の料理に使うようになったのは第二次大戦後といわれています。
にんにくは世界各地で重要視されていますが、特に東洋で多く栽培されています。
食用にするのはおもに地中の球根(鱗茎りんけい)です。
若い葉は「葉にんにく」若い花茎は「茎にんにく」または「にんにくの芽」として利用します。
にんにくの芽は花の茎

にんにくはたまねぎと同じように根元の鱗茎(りんけい)を食用にします。花が種をつけて養分がそちらに回らずに鱗茎に養分をためておけるように、花の茎を切り落とします。この切り落とした部分が「にんにくの芽」として中華料理などに利用されます。辛みやにおいがそれほど強くなく、しかし料理に風味を出すのでよい食材です。
調理のコツ

芯は実の部分より辛みが強く焦げやすいので取り除くとよいでしょう。炒めると苦みが出ます。一片を半分に切り、包丁の刃を根元に入れて芯の部分を掘り起こすように取ります。
きざんで油で炒めると疲労回復効果がアップします。
きざんだり、スライスにするとすぐに火が通りごげやすくなります。こげると苦みが出ますので低温加熱しましょう。
気になるにおいは低温でじっくり火を通すことでにおいの元が揮発します。
みじんにしたりすりおろして時間が経つと青緑色に変色します。鉄の包丁を使うとよくわかります。
これはにおいや辛み成分が時間とともに分解され、鉄と反応しておこります。体に害はありません。
保存のコツ

アミ袋に入れて風通しのいい日陰に吊します。
夏場はそのまま野菜室で保管します。
あるいは皮をむいて一かけずつ冷凍するとそのまま持ちます。チャック付きの保存袋に入れておくと重宝です。また、きざんで冷凍もできます。
にんにく注射の正体は

にんにく注射というものがあることを知ったときにはビックリしました。いくらにんにくが疲労回復に効くからと言っても、エキスの注射?痛くないのだろうか?と思いました。
確認したところ、にんにくは入っていないようです。ビタミンB1を中心とした、水溶性ビタミンが配合された静脈注射です。スポーツの選手や疲れていても仕事を休めない方がクリニックを訪れるそうです。
ま、即効性はあるのでしょうが、注射は遠慮しておきます。
【まとめ】
疲労回復のビタミン注射に「にんにく注射」と名付けるほど、にんにくは薬効に優れています。
にんにくに関する研究も進んでいます。血小板が凝集して血栓を作るのを阻害するよう働き、血液サラサラと表現されます。
抗菌作用もあり風邪の予防、撃退に有効です。
何より、芳香野菜としてのにんにくの存在感は大きいですね。
読みいただきありがとうございました。
〈参考〉
- 技術評論社:食べ物はこうして血となり肉となる
- 小学館:新版食材図典
- ナツメ社:日本のおいしい食材事典
- 星出版社:日本の食材図鑑
☆管理栄養士 すずまり が書きました。
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