あまくてみずみずしい梨はおいしいですね。
梨は不思議な果物です。形はりんごに似ていますが、食感はシャリシャリ、ジャリジャリ、ざらざらしています。
この食感は石細胞(せきさいぼう)と呼ばれるものでお腹の掃除をしてくれます。
梨はとても古くから食べてきた果物で、「もっと甘く、もっとみずみずしく」と改良を重ねて、今日の多品種にたどり着いています。
梨の種類や分け方がいくつかあるけれど、どうなっているのだろうと思い、調べてみました。
また、「梨は水分ばっかりで栄養がない」とも聞きます。体に対しての効果はないのか、梨の薬膳効果の観点からも調べてみました。
秋の代表的なくだものについては以下の記事もご覧ください
目次
梨の薬膳効能

梨は90㌫が水分でみずみずしさの元になっています。
このためのどの渇きをいやし、肺をうるおす民間薬として親しまれてきました。
中国では2000年以上も前から梨を「百果の宗(ひゃっかのそう)」として珍重してきたそうです。黄砂の舞う土地ではのどを痛めることもあり、梨のみずみずしさと甘みがのどに優しく作用したのでしょう。
日本でも秋から冬は空気が乾燥し、呼吸器も乾き気味です。
江戸時代には咳(せき)や痰(たん)、ぜんそくなどの症状改善のため、食養生(しょくようじょう)として梨を取り入れてきたようです。
風邪による咳、急性の気管支炎の症状を和らげるほか、大小便の排泄を促すためむくみや便秘を改善します。
二日酔いにも大いに役立つとか。酒好きには頼もしい効能です。
まとめると以下のようになります。
- 肺やのどをうるおす
- 咳(せき)や痰(たん)を和らげる
- 便通を促す
- 熱を冷ます
- 解毒する
- 尿の出をよくしてむくみを改善する
スポーツ中の熱中症予防にも一役!体の熱を取る梨を冷やしておこう

夏場の屋外スポーツでは熱中症の危険がつきまといます。
甘くてみずみずしい日本梨の歯触りはスポーツ中の水分補給、糖分補給にうってつけです。
体にこもった熱を解消し、エネルギーに変わりやすい果糖・ショ糖を補給することでスポーツのパフォーマンスを落とさずに楽しめます。
梨の薬膳効果は発熱時にも有効
スポーツ時だけでなく、発熱時にも体を冷やし、のどや肺をうるおす梨は、おすすめです。脱水症状を防ぐためにも多めに食べるとよいでしょう。
甘くてみずみずしい梨はシャリシャリとした食感が心地よく、夏の暑さで食欲のないときでもおいしく食べられます。
梨の薬膳効果を高める食べ方メモ
食べる直前にむく
皮をむくと酸化して色が変わってきます。食べる直前にむくようにしましょう。時間が空くときはレモン汁をかけると褐変(かっぺん)を防げます。
梨のみずみずしい白が魅力で食欲がないときでもつい手が出ますね。
しょうがをプラスすると体を温めます
梨は冷え性の方は胃腸を冷やす場合があります。むいて切った梨としょうがを加えてシロップやコンポートにしましょう。しょうがの体を温める作用が胃腸を守ります。
しょうがの効能については以下の記事もご覧ください。
煮詰めて保存する
梨をミキサーにかける、またはすりおろしてとろりとなるまで煮詰めます。咳や痰が出るときにひとさじどうぞ。
毎日少しずつ食べ続けると痰が減るそうです。
梨の薬膳効果で咳止め
皮付きの梨を半分に切り種を取ります。半球の形のままやわらかくなるまで蒸します。やわらかくなったらはちみつをかけてスプーンですくって食べます。
はちみつも梨と同様に乾燥を改善する働きがあるので咳止めの相乗効果を期待できます。
かにと一緒に食べてはいけない!?
薬膳ではともに体を冷やす食べものとされています。食べ合わせると嘔吐・下痢・腹痛の原因となると昔からいわれています。
なしは日本梨・西洋梨・中国梨の三つに分類されます
梨は20数種類に分けられますがよく知られたものとしては以下の三つです。
日本梨

古くからの自生の「ニホンヤマナシ」を、一部では「イワテヤマナシ」を交配させて「もっと甘く、もっとみずみずしく」と改良して今に至っています。
日本梨は香りは少ないくだものです。
皮の特徴から三つに分けられます
コルク層が厚い褐色の赤梨(糖度が高い順)
南水(なんすい)
- 果肉が柔らかくしっかり甘い
- 酸味が少なく日持ちがする
秋月(あきづき)
- 果汁が多く酸味が少ない
- 果肉のきめが細かく食感がよい
豊水(ほうすい)
- 赤梨の代表品種で幸水に次いで生産量が2番目に多い
- 果汁が多い
- 糖度が高いが程よい酸味もあるためさっぱりとしている
愛甘水(あいかんすい)
早生の品種
新興(しんこう)
- 果汁が多く、果肉が柔らかい
- 保存が効く
にっこり
- 栃木のオリジナル品種
- 大玉で果汁が多く酸味は少ない
幸水梨(こうすいなし)
- 赤梨の代表品種で生産量ナンバー1を誇る
- 果汁が多く酸味が少ない人気品種
新高梨(にいたかなし)
- 生産量は幸水・豊水に次いで3番目
- 果汁が多く果肉か柔らかい
- 大きく、日持ちがする
コルク層がほとんどない緑黄色の青梨

夏しずく
- 青梨の早生品種
- さっぱりした後味
二十世紀(にじっせいき)
- 青梨の代表品種
- シャリシャリした食感
- 甘みと酸味のバランスがよくさっぱりとした人気品種
西洋梨

西洋梨は食べ頃が難しい果物ですね。
適切な食べ頃にいただくと、こんなにおいしいものがこの世にあるのかというくらい感動のおいしさです。
追熟の間に分子量が大きいデンプンが果糖・ショ糖・ブドウ糖などに分解されることで甘みが増し、ペクチンがゲル化して舌触りもよくなります。
西洋梨は明治の初期に導入されました。
ヨーロッパと違い高温多湿の環境と追熟を必要とする収穫後の処理に不慣れだったことと相まって生産は伸び悩んでいました。
その後、マルメロを台木にしての栽培が確立して生産が安定しています。
消費者の嗜好の多様化や食物繊維・カリウムなどの機能性の効果への期待も加わって消費が伸びています。
芳香が強く、ねっとりした舌触りからバターペアーと呼ばれます。
ラ・フランス

ラ・フランス
日本での呼び名のとおり、フランス生まれです。
日本へは明治36年に授粉用として導入されました。
収穫は実が固いうちにおこなわれ、追熟させます。
まず2~5℃で10日間予冷し、そのあとで15℃で15日前後の追熟で皮が黄色味を帯び、やや柔らかく、よい香りがしてきたら食べ頃です。
ル・レクチェ
ラ・フランスと同じ頃に日本に導入されました。
ラ・フランスより大ぶりで独特の甘い香りと濃厚な甘みが特徴です。
こちらの品種も固いうちの収穫で、追熟させて食べられるようになります。
大ぶりの分、ラ・フランスよりも追熟期間は長いです。
日本では新潟県が主産地です。
中国梨
日本では見ることが少ない中国梨ですが次の三つの群に分けられるそうです。
ウスリーナシ群
球形で青梨が多い。収穫後しばらく貯蔵すると香りが増し食べ頃になる。
パイリー群
卵形・長球形で赤い斑点が入るものもあります。
シャーリー群
形・味ともに日本梨によく似ています。
日本梨のシャリシャリは「リグニン」と「ペントザン」

キトロロギストXの記録 WEBページより
日本梨のシャリシャリ感は食べものとして、とても不思議な食感だと思います。この食感は石細胞(せきさいぼう)と呼ばれるものでこのため日本梨は「サンドペアー」といわれます。
石細胞はリグニンやペントザンという成分からできています。熟すにしたがって細胞の壁を厚くしていくのでシャリ感が出ます。
なぜ石細胞になるかはわかっていないそうです。
リグニンは食物繊維
リグニンは木の20~30㌫を構成している繊維成分です。
食品の分野では食物繊維として働きます。梨にはリグニンが多く含まれています。
ペントザン
ペントザンはペントースという五炭糖(五角形の結合をしている単糖類)の重合体でヘミセルロースとして存在しています。
ヘミセルロースは私たちの消化器官では消化できない炭水化物でこちらも食物繊維です。
これに対して西洋梨の完熟したおいしさはとてもねっとりとなめらかです。こちらは「バターペアー」と呼ばれています。
石とかたやバター、同じ仲間でもずいぶんと違うものですね。
【まとめ】梨の薬膳効果は体を冷やして肺をうるおす

「もっと甘く、もっとみずみずしく」と品種改良されてきた日本梨は夏から秋にかけて旬を迎える多くの青果同様、体の熱をとり、呼吸器をうるおしてくれます。
生産者が丹精込めて育てたおいしい秋の果物、梨を品種ごとに食べ比べて楽しみたいですね。
最後までお読みいただきありがとうございました。
〈参考〉
- 小学館:新版食材図典
- 家の光協会:和の薬膳食材手帳
- 西東社:薬膳・漢方食材&食べ合わせ手帳
☆管理栄養士 すずまり が書きました。
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