種や木の実は植物が子孫を残すためのものですが、動物にとってもありがたいものです。
特に冬を迎える前の秋の実りは森で暮らす動物だけでなく、私たちにも飢饉の折の命の糧になりました。
特に栗はアクを抜く必要もなく、天明の大飢饉では救荒作物として重宝されました。
改めて栗の栄養を救荒作物の観点も加えながらみていきたいと思います。
栗の栄養の特徴は

栗はブナ科クリ属の木の実です。
世界各地に分布していて、古くから食用とされています。
日本の栗は自生していたシバグリから改良されたものでニホングリと呼ばれています。
主成分はでん粉で甘みはショ糖が主体でブドウ糖や果糖をわずかに含みます。
ビタミン類はビタミンCとBが比較的多く含まれています。
【主なナッツ類の栄養比較】
100g中 | エネルギー
(kcal) |
たんぱく質
(g) |
脂質
(g) |
炭水化物
(g) |
日本ぐり生 | 164 | 2.8 | 0.5 | 36.9 |
ぎんなん生 | 171 | 4.7 | 1.6 | 34.8 |
甘ぐり | 222 | 4.9 | 0.9 | 48.5 |
えごま乾 | 544 | 17.7 | 43.4 | 29.4 |
らっかせい大粒乾 | 560 | 25.2 | 47 | 19.4 |
ごま乾 | 586 | 19.8 | 53.8 | 16.5 |
アーモンド乾 | 587 | 19.6 | 51.8 | 20.9 |
くるみいり | 674 | 14.6 | 68.8 | 11.7 |
日本ぐりとぎんなんは〈生〉で他の食品は乾燥させていたり加熱しているので単純には比べられませんが、たんぱく質・脂質の量と炭水化物の量は反比例の関係にありますね。
栗の栄養が救荒作物となり得たのはどんな点か

栗は天明の大飢饉(1782~87年)のとき、救荒作物として大活躍しました。そのときの栗の品種を「銀寄」という景気のいい名前にして感謝の気持ちを伝えているようです。
種やナッツ類の栄養は以下のように2つに分類されます。
- 糖質を多く含むもの・・・栗・ぎんなん・トチの実・しいの実・どんぐり
- たんぱく質・脂質を多く含むもの・・・くるみ・アーモンド・ごま・ココナッツ
栗・どんぐり・しいの実・トチの実などのでん粉を多く含むナッツは米が作られる以前の縄文時代には主食として食べてきました。
稲作が定着してきても、天候不順などで飢饉の年もあり、その折には救荒作物として人々の食生活を支えてきました。
栗はどんぐりに比べて味もよく食べやすいことから、とても貴重な食料でした。
栗の自然な甘さは貴重だった

ほくほくと甘い焼き栗
砂糖がとても貴重だった時代には栗とさつまいもは自然の甘味としてとても貴重でした。
栗は菓子としても楽しまれた
栗には菓子としての歴史も長くあります。
奈良・平安時代にはナッツは最高級の菓子の一つでした。
特に栗を乾燥させて皮をとったカチグリは朝廷への献上品ともされていました。
安土桃山時代には茶会の菓子にも栗が使われていました。
もちろん栗は現在まで高級な和洋菓子素材として活躍しています。
【まとめ】栗はでんぷん質が多く救荒作物として貴重でした
栗は縄文時代の遺跡からも炭化した栗の化石が発掘されているほどなじみ深い木の実です。
種子である栗は発芽のためのエネルギーのかたまりです。多彩な栄養素が含まれるため、大飢饉の際の救荒作物として大事にされてきました。
また、砂糖がとても貴重な時代には甘味としても楽しまれました。
今も栗の畑では梅雨入りの頃に栗の花が咲き、気温が上がるとともに青いイガが大きくなっていきます。
そして秋にイガがパックリ割れて大地に落ちると秋も本番です。
皮をむくのが大変ですが栗ご飯を1回は炊いてみましょうか。
お読みいただきありがとうございました。
〈参考〉
- 群羊社:たべもの・食育図鑑
- 小学館:新版食材図典
- 西東社:薬膳・漢方食材&食べ合わせ手帳
- 家の光協会:和の薬膳食材手帳
☆管理栄養士asariが書きました。
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