昆布は「よろコンブ(喜ぶ)」として日本古来の縁起物(えんぎもの)の地位を保っています。
幅の広い昆布は「広布(ひろめ)」と呼ばれて、結婚披露宴の「お披露目(ひろめ)」の語源にもなったとか。
戦国時代には必勝祈願の品でもありました。
昆布は繁殖力も強いそうで「子生婦(こんぶ)」として結納の品にも用いられるようになりました。
ミネラルたっぷりの昆布は産地によってかなり個性が違います。
だしに向く昆布だけでなく、昆布巻き、煮物、酢昆布、とろろ昆布といろいろに加工もされています。
昆布のうまみ成分は主にグルタミン酸ですが、昆布の種類によってだしに特徴が出ます。
昆布の種類と特徴をみていきましょう。
昆布の種類と特徴
北海道は昆布の一大産地です。
北海道の中でも海流によって特徴が大きく変ります。
主な種類は
- 利尻昆布
- 真昆布
- 羅臼昆布
- 三石(日高)昆布となります。
昆布の産地の図を参照してお読みください。

昆布の種類と特徴① 利尻(りしり)昆布
~~味にうるさい食い倒れの町、大阪職人が選んだ昆布~~
特徴
- 利尻島には川がありません。土壌は火山灰でできているので雨水はそのまま、地下に吸収されて徐々に周辺の海に出ます。昆布は海水からミネラルをたっぷり得ることができるのでおいしい昆布になるといわれています
- 植物学的には真昆布と同様ですが、塩味があり、味も濃い、香り高い透明なだしがとれます
歴史
大阪・京都に根付いた400年の味の文化の中で瀬戸内で使われるいりこを使う関西風のだしには、天然の塩分がある利尻昆布が使われてきました。
用途
- 関西風うどん、そばのだしに
- 湯豆腐、鍋のだしに
- 京都の高級料理店のだしに
【専門店が語るだしの特徴】
- 真昆布と同種の昆布で少し塩分があり、上品でクセがありません
- 関西で好まれます
昆布の種類と特徴② 真(ま)昆布
~~新鮮素材の合わせだし用昆布~~
特徴
- 津軽海峡で折り返す対馬暖流と千島寒流が交わる道南地区でとれる幅が広い昆布です
- まろやかでクセがありません
白口浜
- 薄緑色の昆布で献上昆布としても人気です
- 澄んだだしの上品な味わいがあり、煮ても、炊いてもおいしい昆布です
黒口浜
- 風味がよく味にコクがあります
- 主にだし用昆布として使われます
本折浜
幅が広く長い昆布です
結納用、神前用として使われます
黒浜口よりだしは淡泊ですが、安価なので好評です
歴史
古くから天皇家に献上されるなど、品質に定評があり、加工用としても北陸・中国地方に昆布の加工文化を作ってきました
用途
- だし全般に使えます
- 特にかつお節との相性がよいとされています
- ご飯と一緒に炊いたり、煮魚と一緒に煮込んでも使いやすい昆布です
- 昆布締めにも向きます
- 肉厚なので佃煮、塩昆布として商品化されるなど万能昆布です
【専門店が語るだしの特徴】
- 淡泊で澄んだだし汁が引けます。
- 主張はないが、ほのかな甘みがあり風味がよいとされます。
- 関西でよく使われています。
昆布の種類と特徴③ 羅臼(らうす)昆布
~~精進料理を支えた最高級甘口昆布~~
特徴
- 北海道羅臼町近海の茶褐色の昆布です
- 正式名称は「リシリ系エナガオニコンブ」です
- だしが濁るのが特徴ですが、上質な甘み、香り、濃厚なコクがあります
- 「昆布の王様」ともいわれています
- やわらかいので、煮昆布に向いています
歴史
- 甘味料が少なかった頃より精進料理の甘味として使われてきました
- 北陸地方を中心に、だしや昆布巻きに使用されてきました
用途
- 割烹料理、精進料理のだし
- 昆布巻き、煮物、佃煮などに使います
【専門店が語るだしの特徴】
- 味が濃く香り高い。うま味は群を抜いている
昆布の種類と特徴④ 日高昆布・三石昆布

~~便利な早煮昆布として活躍~~
特徴
- 正式名称は「ミツイシコンブ」です
- 日高昆布(ひだかこんぶ)、三石昆布(みついしこんぶ)と呼ばれ、北海道日高沿岸でとれます
- 通常の昆布漁の時期は8月~9月ですが、このあたりでは6月の若葉のうちに採取するので身が柔らかく、煮上がりが早いのが特徴です
- グルタミン酸が少ないので、うま味の出方が少なく、だし向きではないといわれますが食用として優れています
- 流通量は多いです
歴史
- 早く開拓された地域なので、特に関東を販路として普及させました
- 全国的にも様々な加工、食文化を育んできました
- 東北・関東ではおでんの昆布・煮物として
- 関西では佃煮
- 九州・沖縄では野菜炒めなどに使われています
用途
- おでんの昆布
- 昆布巻き
- 煮しめ
- マリネ
- 漬物
【専門店が語るだしの特徴】
- コクがあり、味は濃く感じるが、うま味は他の昆布より少ないです。
昆布の種類と特徴⑤ がごめ昆布

北海道の道南地区の浜に自生する昆布です。
かごの編み目のような模様があり粘りが強い昆布です。
とろろ昆布、おぼろ昆布、松前漬けに使われます。
昆布は江戸時代、北前船で関西に運ばれた

tanken.comより
日本の昆布の多くは東北地方より北の沿岸に分布しています。
その中で食用とされる数種はいずれもよく似ていて、見ただけでは、なかなか区別がつきません。分子生物学的に見ても近縁だそうです。
昆布の特徴は海域や海流の影響を受けているのかもしれませんね。
江戸時代、当時、蝦夷地(えぞち)と呼ばれていた北海道と大阪の間を北前船が物資を運んでいました。
よいものはまず上方に運ばれます。ある意味で上方の食文化の一翼を担っていたといっても過言ではないでしょう。
昆布も、上方の水に合うものがまず選ばれたと聞いたことがあります。
上方が選ばなかった昆布が江戸にきて「おでんの結び昆布」になったのでしょうか。
昆布の栄養と効果

昆布独特の粘り成分は水溶性食食物繊維のアルギン酸やフコイダンです。
他にグルタミン酸、ヨウ素、カルシウム、鉄分などを含みます。
アルギン酸:ヌメリの元になる成分で水溶性食物繊維です。血中コレステロールの上昇を抑える働きををします
フコイダン:昆布やわかめのヌメリの元です。抗がん作用もあるといわれる水溶性食物繊維です。
水洗いはしない

昆布は表面の白い粉に価値があります。
白い粉はマンニット(マンニトール)と呼ばれるうま味成分です。
洗い流さず、固く絞ったふきんやペーパーなどでさっと拭く程度にしましょう。
【まとめ】昆布の種類は主に4つ

昆布は縁起のよい食材としてお祝いの席に欠かせません。
昆布の種類は海流などによって特徴が大きく変ります。
主な種類は以下の4種類です。
- 利尻昆布
- 真昆布
- 羅臼昆布
- 三石(日高)昆布
昆布は和食のだしとして「かつお節」とともに食文化を担ってきました。
なかなか見分けがつかない昆布の、産地ごとの特徴をうまく使い分けてきたものだと感心します。
和食になくてはならない昆布を上手に利用していきたいものです。
お読みいただきありがとうございました。
〈参考〉
- NHK出版:からだのための食材大全
- 小学館:新版食材図典
- 丸勝かつおぶし株式会社作成講演会資料
☆管理栄養士 すずまり が書きました。
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