かぶと大根は白いし、「春の七草」にも並ぶように入っているし、用途や機能機能も似ています。
同じアブラナ科でもあり、兄弟分のように感じてしまいますが、ずいぶん違いがあります。
かぶの栄養をみながら、大根との違いも見つけてみましょう。
かぶの栄養① 根の部分
かぶは根の部分と葉の部分で栄養価がずいぶん違います。
根の部分はビタミンCやカリウム、消化酵素のアミラーゼなどが含まれます。
アミラーゼは唾液や膵液(すいえき)に含まれる消化酵素です。ジアスターゼともよばれるでんぷんを分解する酵素です。
ご飯やパン、うどんなどを食べたときにでんぷんの消化を促進し、栄養の吸収を助けます。
ですが、93.9%が水分です。収穫したての新鮮なものはとてもみずみずしいのもうなずけますね。
かぶには大きいもの小ぶりなものといろいろな品種があります。
かぶに含まれるアミラーゼやカリウム、食物繊維、ビタミンCは皮の下に多く含まれています。小さめのかぶは皮もやわらかいので、よく洗って皮つきのまま調理しましょう。
大きなかぶは筋があり口当たりが悪いので、皮をむいて使うほうがよい場合があります。むいた皮は塩昆布と合わせて浅漬けにするなど有効に使い切りたいものです。
皮をむくと煮くずれしやすくなります。
煮るときは火の通りが早いので、最後に入れてサッと煮るようにしましょう。
かぶの栄養② 葉の部分

葉の部分は緑黄色野菜です。ベーターカロテンやビタミンB1、B2、C、鉄分やカルシウムなども含み、栄養豊富です。
かぶの葉はクセも少なく、さっとゆでるとやわらかく食べやすいので無駄なく食べるようにしましょう。
ベーターカロテンはゆでると増えます。根と一緒に葉もシチューやポトフに入れると溶け出たビタミンを無駄なく摂取できます。
かぶと大根との比較
かぶと大根は似ています。後述するように「春の七草」にも並んで入っています。
でんぷんを消化する酵素のアミラーゼ(ジアスターゼ)はかぶにもだいこんにも含まれています。
ビタミンCもたっぷりで栄養素的に似ているところが多くあります。
大きな大根の陰に隠れがちですね。実際にかぶの作付け面積は大根の1/7程しかないそうです。
ですが日本に伝来したのはかぶの方が先で、稲作より早く栽培がはじまったのではという説もあります。
かぶの白い表面はツルツルしています。また、大根より甘みが強く、なめらかな肉質は独特のおいしさです。
花の色はかぶは黄色で大根は白です。かぶは白菜やキャベツの仲間で、大根とは植物学的にはものすごく近縁というわけでもないそうです。
似て非なるかぶと大根の特徴を生かして味わいたいですね。
かぶの別名は「すずな」

春の七草
かぶは別名を「すずな」とよび、春の七草に入っています。
春の七草は「せり・なずな・ごぎょう・はこべら・ほとけのざ・すずな・すずしろ」の7種です。
「すずな」はかぶ、「すずしろ」は大根のこと。きれいな呼び名ですね。
かぶも大根も白いところだけでなく葉も加えてきざみかゆを作ります。
かぶの葉の古名は「あおな」「かぶらな」ともよばれていました。先人が葉を重要視していた様子が伝わってきますね。
正月明けの七草がゆは平安時代に中国から伝わりました。江戸時代には若菜の節句として幕府の年中行事に定められていたそうです。
七草がゆは胃腸をいたわり、家族の健康を願うだけでなく、冬場の野菜摂取不足を補う意味もあったようです。
かぶの伝来のふしぎ
かぶはヨーロッパ系とアジア系に大別されます。
ヨーロッパでもかぶは食料用や飼料用に栽培されてきました。ポトフやボルシチなど、家庭料理に使われ代表料理になっています。
日本には中国経由でアジア系のかぶが伝わっていますが、しかし、赤かぶなど他の国では見られない品種も多くあり、日本独自の品種が生まれてきたようです。
西日本にはアジア系の在来種が多いのですが東日本にはなぜかヨーロッパ系の特性を持ったかぶが多く、また、野生化したヨーロッパ系のかぶもあるそうです。
さらにそれらが混ざり合った、多様な品種が見られるとのこと。誰が、いつ、どんな風にヨーロッパ系のかぶを持ち込んだのか、謎とされています。
中国を経由しないでシベリアから直接伝来されたとも考えられるようです。
かぶの旬ー春はやわらかく秋は甘くなる

大きなかぶはロシアの民話
ロシアの民話であり童話のひとつに「おおきなかぶ」というお話があります。
畑のかぶが大きくなり、さあ、収穫しようとしましたが、大きくて抜けません。
おじいさんはおばあさんを呼んできて「うんとこしょ、どっこいしょ」、まだまだかぶは抜けません。おばあさんは孫娘を呼んできて、さらに犬を呼び、猫を呼び、ネズミを呼びという情景をリズム感よくつないでいくお話です。
私にも懐かしい絵本です。
その中で、おじいさんは育てているかぶに向かって毎日のように「おおきく おおきく おおきくなあれ。あまーく あまーく あまーくなあれ」とことばをかけます。
その声に応えてかぶは大きくなったわけです。
恥ずかしい話ですが、そのときはかぶに甘くなれと念ずるおじいさんの心中がさっぱりわかりませんでした。「かぶが甘くなる?ロシアのかぶは日本と違うのだろうか?」
その後、甘くなれと念じた「甘さ」のこと、ロシアの郷土料理といえる「ボルシチ」に入れるビーツのことを知って、甘くなれと念じたおじいさんの言葉が腑(ふ)に落ちました。
厳しい寒さにあうと、野菜は自分が凍ってしまわないように、野菜に含まれるでんぷんを糖に変えて寒さをしのぎます。
「沸点上昇 氷点降下」と習った「アレ」ですね。でんぷんのままより糖に変えた方が凍りにくいと野菜が判断しているところがすごいと思います。
- ビーツの根の部分100gに炭水化物は 9.3g
- かぶの根のところは100gにつき 4.6g
炭水化物だけを比べるとかぶに比べてビーツは炭水化物が倍以上多いですね。ロシアの厳しい寒さに立ち向かう準備ができているといったところですね。
一年のうちでかぶが収穫できる時期は春と秋の2回あります。
春のかぶは皮も葉も柔らかく、秋のかぶは糖度が上がって甘みがあります。
【まとめ】かぶの栄養は根と葉で異なる
かぶの特徴は大根と煮ている部分が多く、大きな大根の陰に隠れがちですがそれほど近い種ではありません。
かぶの栄養は根の部分と葉の部分では異なります。
葉の方は緑黄色野菜としてもアクが少なくてやわらかく、ベーターカロテンやビタミンB1、B2、C、鉄分やカルシウムなども含み、栄養豊富です。
根の方は、ビタミンCやカリウム、消化酵素のアミラーゼなどが含まれます。
日本にはアジア系のかぶもヨーロッパ系のかぶもあり、西日本はアジア系、東日本はヨーロッパ系のかぶが主流になっています。
「おおきなかぶ」の絵本は日本でも人気があり、おじいさんが「大きく甘くなれ」と念じながら育てる場面が描かれています。
生でよし、煮てもよしのかぶをおいしく味わいたいものですね。
お読みいただきありがとうございました。
〈参考〉
NHK出版:からだのための食材大全
群羊社:たべもの・食育図鑑
☆管理栄養士 すずまり が書きました。
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