肉食が中心だったヨーロッパでは、豚は古くから飼われていました。
寒さが厳しい冬は畑での収穫ができないため人の食べものも節約しなくてはなりません。草や木の実も少なくなるため、家畜のえさも工面しないとなりません。そこで寒くなる前に豚をハムやベーコンに加工して保存、冬の間の大切な食べものとしてきました。
はじめは豚肉のかたまりを塩漬けにして保存していましたが、だんだんと加工方法に工夫が加えられて部位別にしたり、燻煙して保存性を高めたりと種類が豊富になりました。
ハムの種類はどんなものがあるのでしょうか。ハムの種類を知って、おいしく食べましょう。
目次
加熱ハムの種類
ハムは豚肉の部位によってロースハム、ショルダーハム、ボンレスハムと呼び分けられています。

ハムやべーコン等で使う主な部位
ロースハムはその名の通り「ロース」、肩から腰にかけての部分です。
ショルダーハムは肩の部分、ボンレスハムはもも肉から骨を取り除いて作ったハムです。
ベーコンはバラと呼ばれる部分で作ります。
ロースハム

ロースハム:鹿野ファームより
豚のロース肉を使用し加熱したタイプ。そのまま食べてもおいしいハムです。
厚切りにしてバーベキュー・・・盛り上がりそうですね。
ショルダーハム

ショルダーハム:函館カール・レイモンより
豚肩肉を使用したハム。ロースハムと同じ製法で加熱して作ります。
赤身肉が多いハムです。
ボンレスハム

ボンレスハム:モクモクショップ
豚のもも肉を使用して加熱して作ります。
厚めに切ってハムステーキにするとおいしいです。
プレスハム

プレスハム:KK越後ハムより
豚肉、牛肉、馬肉、羊肉、ヤギ肉を使った日本独自のハム。
サンドイッチなどに使いやすく作られています。
混合プレスハム

混合プレスハム 出典 img02.naturum.ne.jp.
畜肉以外に、鶏肉、魚肉なども加えてプレスハムと同じ製法で作ったハム。
生ハム

生ハム 平田牧場
もも肉をかたまりのまま塩漬けにして加熱せずに乾燥させながら長期間熟成させたハム。やわらかく塩味がきいた点が特徴です。
熟成後、低温で燻製したものがドイツのラックスハムと呼ばれる生ハムです。
ベーコンはバラ肉で

ベーコン
脂の多いバラ肉の部分を整形したのが、ベーコンです。
料理でベーコンを使う際はまずじっくりと加熱して脂を出してからほかの材料を入れていきます。
ソーセージは残り肉で作りました
豚を1頭解体して、ハムやベーコンにし、余った細かい肉は挽肉にしてソーセージを作りました。
細かくした肉は空気に触れる面が多いので傷みやすくなりますが腸詰めにすると密閉性が増すので保存するのにも都合がいいですね。
挽肉にラードを混ぜて調味料、香辛料を加えます。燻煙したり水煮にしたのちに乾燥させて作ります。
レバーや血液、舌などを加えたものもあります。
冬の前に解体した豚の命を無駄にしないで食べ尽くします。
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ドイツの食事は
ドイツの食べものと言えばじゃがいもとハム、ソーセージという印象です。ドイツの厳しい気候と風土が作り出した食文化です。
ドイツは北海道より北に位置し、山も多い寒い国です。小麦は育ちにくい気候ですが、大麦やライ麦は収穫できます。
ですからドイツのパンは白くありません。大麦やライ麦を使ったパンは黒パンと言われる褐色に焼き上がります。
ですが少ない種類の穀物をおいしく食べるための製粉技術や加工方法が発達しました。
その結果ドイツのパンは世界一種類が多いと言われます。
穀類に変わるものがじゃがいもです。
ドイツの家庭での食事はじゃがいもとザワークラウト(キャベツを酢漬けにして発酵させた保存食)、ハムまたはソーセージが多く登場します。
「朝にゆで卵」、「夕にチーズ」の火を使わない食事だそうです。
温かい食事はメインの昼食にとります。最近は仕事の関係で昼と夜の食事が入れ替わる家庭も増えているそうです。
日本のハム作りは
日本で初めてハムが作られたのは明治5年といわれています。
大正時代にドイツ人によりロースハムが市販されました。
昭和に入ると豚肉の他に馬や牛の肉を混ぜた価格の手ごろな通称「寄せハム」が登場しました。それが今のプレスハムです。
大量生産され一般家庭に普及したのは戦後だそうです。
「無塩せき」ってどういうこと?
生協やオーガニック食品を扱うお店ではハムやソーセージは発色剤を使っていない「無塩せき」と呼ばれる商品が主流です。近頃はスーパーなどでも「無塩せき」の表示がある製品が並ぶようになりました。
「無塩せき」のハムやベーコン、ウインナーなどは色に特徴があります。きれいな色ではありませんが自然です。
この「無塩せき」とは、ハムに使う原料の肉に発色剤を使用せず塩漬けしたものをいいます。
発色剤に関しての規定ですので添加物を使っていないと言うわけではありません。
私は学校給食に長くたずさわってきましたが、ハム、ウインナー類は無塩せき、保存料無添加のものを納品していただいていました。
給食はその日のうちに使用しますから保存料を添加する必要はありません。また添加物は少ない方が好ましいので、発色剤を使わない無塩せきを使用していました。
手頃な値段の加工肉の製品は使用原材料の欄にたくさんの添加物が書かれています。「知らないうちに、こんなに食べているんだ」と思ってしまいますね。
【まとめ】ハムは豚肉の有効活用で編み出された肉の保存法
ハムは気候が厳しいドイツでは、冬場の家畜のえさが少なくなる前の、秋の豊富なえさでよく肥えた豚をハムやベーコン、ソーセージに加工しました。
ハムは使う肉の部位によって名前がつきます。
手軽に食べることができ、栄養価も高いハムやベーコン、ソーセージを朝食で有効に活用してはいかがでしょう。
お読みいただきありがとうございました。
〈参考〉
- NHK出版:からだのための食材大全
- ポプラ社:食べものの大常識
- 小学館:食材図典Ⅱ
- 群羊社:たべもの・食育図鑑
☆管理栄養士 すずまり が書きました。
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