「秋さば」は秋の季語になっています。
ただでさえ脂が多い鯖にさらに脂がのる「秋さば」
「秋さばは嫁に食わすな」といわれていますが、食べたらどうなる?
昔の状況と今の状況を比べて考えてみたいと思います。
目次
「秋さばは嫁に食わすな」は、いじわるか、親切か?
「秋さばは嫁に食わすな」は「秋なすは嫁に食わすな」とともによく知られた微妙(びみょう)なことわざですね。
さばは3月から8月にかけて産卵します。さばにとって秋はちょうど充実期。海水温もだんだんと下がり、脂肪も多くなります。まさばの旬を秋から冬としているのももっともなことです。
今のように獣肉を食べない時代には、脂ののった魚は身体に染みる程のおいしさだったのではないでしょうか。
いじわる説
「仕事は大勢で、おいしいものは小勢(こぜい)で」ということわざがありますが、季節のおいしいさばは「お嫁さんにはもったいない。お嫁さんのいないときに食べておこう」と、底意地の悪いことを考えることもあったのでしょうか。

脂が落ちるので煙りと炎が出ます
でも、七輪で焼いたら脂が落ちて、匂いますから、隠れて食べるのは難しかったと思います。
紫式部も夫の留守にいわしを食べて、たしなめられたとか。
さば、いわし、さんまの、秋に脂がのっておいしくなる魚は、七輪で焼いたときの油煙はもうもうと大変なものです。最近の煙が出ないロースターでは比較にならない程です。
意地の悪いことはしないで、「おいしいものはみんなで」の方があとあとを考えて、お得だと思いますが、どうなのでしょうね?
親切説
おいしいさばは、危険もあります。
今のように輸送体制が整っていない時代には「さばにあたる」ということは珍しくありませんでした。
「あたる」とは食中毒にかかるということです。
さばにあたっても命に別状はないようですが、妊娠中の嘔吐、下痢は胎児の栄養を考えると困りものです。薬もなるべく飲みたくない時期ですから、病気にならない用心が大切です。
現在でも妊婦さんはノロウイルスの食中毒予防に牡蠣(カキ)を控えるくらいですから、お嫁さんの身体を心配するのは当然のことだと思います。
牡蠣(カキ)とノロウイルスについては以下の記事をご覧ください。
嫁姑の関係がよくなる解決策は
「秋さばは嫁に食わすな」のことわざですが、さて、いかがしたものでしょう?
- お嫁さんの分も用意して、みんなで食べる
- 妊娠中の場合はみんなで控える
これでハッピーとなりますかどうかはわかりませんが、試してみる価値はありそうですね。
なぜさばにあたるのか

最近は「さばにあたった」ということを聞かなくなってきました。
それは流通網が整って、低温管理が行き届いたからです。
さばにはヒスチジンという成分が多くあります。ヒスチジンはアミノ酸の一種です。さばの死後、海洋細菌によってヒスタミンという成分に変化します。ヒスタミンは一定量を超えると中毒症状を起こすことがあります。
ヒスチジンがヒスタミンに変化するのは温度が密接に関係しています。
さばがまだまだ新鮮と思われる状態でも、温度によってはヒスタミンが発生しています。その結果、アレルギーの様な症状が出ることがあります。
「さはの生き腐れ」といわれるのはこのように、一見新鮮そうに見える鯖でも中毒症状が出るところから言われる言葉です。
他の魚と比べてさばはもともと鮮度が落ちやすい魚のうえ、アニサキスなどの寄生虫がいることがあります。このため、昔から鯖を生で食べるのは産地だけで、塩漬けや酢じめがおこなわれてきました。
秋さばを食べて嫁も姑も健康になろう

さばは青魚の中でも特に脂肪が多い魚です。
生活習慣病の予防に効果があるとされる、IPA(イコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)が豊富です。コレステロール値を下げる、血栓を予防する、血圧を下げるなどの作用があります。さらに、脳の老化を防ぎ、老眼の予防・改善、視力回復の効果が期待できます。
IPA・・・血液を固まりにくくしたり、固まった固まった血液を溶かして血管が詰まるのを防ぎます。高血圧を防ぎ、血液中の中性脂肪を減少させてくれます。
DHA・・・IPA同様、高脂血症を予防して、動脈硬化の進行を遅くします。脳細胞の活動を活発にする働きもあります。
鯖の血合いには糖質や脂質ビタミンB、B2、B6、ナイアシン、鉄分が多い部位です。エネルギーの代謝を活発にするので、貧血予防、疲労回復に役立ちます。
さばについては以下の記事もご覧ください
しめさばは保存性を高める工夫です
鮮度が落ちるのが早いので、殺菌や、防腐のために酢や塩を使った料理が多い “さば”。
“しめさば” もそのひとつです。
保存性を高め、臭みもとれるほか、血圧や血中コレステロール値も下げる酢との相乗効果で生活習慣病を予防します。
しめさばはまず塩を振ります

しめさばは三枚におろしたさばに塩を振り、約30分おいてから、塩を洗い流して水気をふきます。その後、かぶるくらいの酢に半日から1日漬け込みます。
【まとめ】秋さばをみんなで食べて生活習慣病を予防しよう
「秋さばは嫁に食わすな」のことわざについてみてきました。
いじわる説も、親切説も大いに信憑性があることわざですね。
見方を変えると、
- 「いじわるの中にある親切心」
- 「親切心の中の、ちょっとしたいじわる」
といった 心が隠れているのかもしれません。コワいコワい!
「食べものの恨みは恐ろしい」ともいいます。みんなで食卓を囲んで、脂がのって、さらおいしくなった秋さばを食べましょう。
食べたらどうなる?
健康になります!
お読みいただき、ありがとうございました。
〈参考〉
- 家の光協会:和の薬膳食材手帳
- 小学館:新版食材図典
- NHK出版:からだのための食材大全
- 群羊社:たべもの・食育図鑑
☆管理栄養士 すずまり が書きました。
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