大豆の加工品のひとつ「油揚げ」は「揚げ豆腐」とか「薄揚げ豆腐」あるいは単に「お揚げ」と呼ばれる、木綿豆腐を薄く切って植物油で揚げたものです。
今は町の豆腐屋さんが少なくなりましたが、朝の豆腐屋さんの店先には揚げ物の匂いが流れたものでした。
豆腐を薄く切って油で揚げることで、保存性が上がり、何よりコクが出て、あっさりした料理でも味に深みが加わります。
もともとが大豆製品ですから栄養もたっぷり、動物性たんぱく質を摂らないお坊さんの健康を支えてきました。
油揚げの栄養は精進料理で大活躍していると言えるでしょう。
大豆の栄養については以下の記事もご参照ください
油揚げの栄養・・・たんぱく質

油揚げのたんぱく質は100g中に23g程度あります。 長方形の油揚げ1枚が約27gとして約6gのたんぱく質がとれます。
これはたまご1個と同じくらいのたんぱく質量となります。
大豆のたんぱく質は「畑の肉」といわれますが、油揚げも同様、なかなかの健闘ぶりですね。
副菜に混ぜる程度では量も少ないでしょうが、いなり寿司などではたくさんいただけます。
そして大豆のたんぱく質は良質たんぱく質と呼ぶ、血や肉にかわりやすいアミノ酸の配合になっています。
たんぱく質の良さを計るものさしに「たんぱく価」・「プロテインスコア」というものがあり、100に近いほどよい数値です。
たんぱく価が100の代表とされるのがたまごです。
ほかにも牛乳・牛サーロイン・豚ロース・マグロ・アジ・サケ・サンマ、そして大豆も100になっています。
これが大豆は畑の肉と呼ばれるゆえんです。
良質たんぱく質については以下の記事もご覧ください。
油揚げの栄養・・・ビタミン類

油揚げには大豆の栄養そのままに、ビタミンE・B群が多いです。
ビタミンEは体のサビを止める、抗酸化ビタミンと言われています。いわゆる「血液サラサラ」「血管の掃除人」と呼ばれるビタミンです。
ほかにビタミンB群も豊富です。
ビタミンB1は糖をエネルギーに変えるビタミン
ビタミンB2は脂肪をエネルギーに変えるビタミンである上、美肌にもよいとされています。
油揚げの栄養・・・ミネラル群
油揚げには大豆のミネラルがそのままあり、カリウム・カルシウム・マグネシウム・鉄など各種ミネラルが豊富です。
カルシウムが多いことはシニア女性に心配な骨粗しょう症を大豆イソフラボンとともに予防してくれる強い味方です。
機能性成分・・・大豆レシチン
レシチンは細胞膜や脳などの構成成分になるリン脂質の一種です。
血中コレステロールや中性脂肪を下げる作用があると言われています。
また、老化や認知症の予防にも役立つそうです。
レシチンが含まれる食品は大豆のほかに、卵黄、酵母などがあります。
機能性成分・・・大豆サポニン
サポニンはゆでたり煮たりするときに、アワとなって出てくる、植物に含まれるアクと呼ばれる成分です。アクはすくい取って捨てられていましたが、大豆サポニンには抗酸化作用などが期待されています。
機能性成分・・・イソフラボン
女性ホルモンの様な働きをするといわれるイソフラボンは大豆に含まれるフラボノイドの一種です。
女性ホルモンのエストロゲンに似た働きをすることがわかっていて、特に更年期の女性に起こりがちな様々な不調をソフトに抑えてくれます。
また、閉経後に起こりやすい骨粗しょう症や関節痛などの改善効果が期待されています。イソフラボンが骨からカルシウムが溶け出すのを抑えてくれるからです。
機能性成分・・・大豆オリゴ糖
オリゴ糖はダイエットや糖尿病に効果抜群と言われています。
オリゴ糖は野菜の根や種に含まれていることが多く、肉や魚にはほとんど含まれていません。
ブドウ糖や果糖と違って胃や腸での吸収や分解がされにくく、蓄積されずに便と一緒に排出されるためエネルギーとして使われにくい甘味です。
腸に届くと、善玉菌のビフィズス菌のエサになり腸内環境をよくします。さらに腸のぜん動運動をスムーズにして、便秘の解消に役立ちます。
油抜きは必須か

油揚げは湯にくぐらせて、油分を浮かしてから使う「油抜き」という工程をしてから使うのが一般的です。
以前は油が古くなっているからなどと聞いたことがありますが、今ではもっぱら、余分な油を除いて、味の染み込みをよくするためにおこなわれています。
豚汁などに使うときは油抜きをしなくてもおいしく作れます。
油抜きをするとその分、カロリーが低くなりますので、ダイエット中は一手間かけるといいかもしれませんが、逆に、油抜きをしないで使ってコクのある料理に仕上げるのもひとつの方法でしょう。
【まとめ】
油揚げは大豆の栄養を引き継ぎ、豆腐の消化の良さと、すぐに食べられる手軽さ、豆腐よりは日持ちがする油揚げを料理のコク出しに使ってきました。
油揚げ1枚とたまご1個のたんぱく質量が同等というのは宗教上の理由やアレルギーなどで獣肉が食べられない方の助けになります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
〈参考〉
- 高橋書店:あたらしい栄養学
- 日本文芸社:栄養を知る事典
- 家の光協会:和の薬膳食材手帳
☆管理栄養士 すずまり が書きました。
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