豆腐は江戸時代の頃から夏は冷や奴、冬は湯豆腐として親しまれてきた、庶民の貴重なたんぱく源です。
それだけにいろいろと含蓄(がんちく)のあることわざが伝えられています。
豆腐のことわざに人生の教えを見てみましょう。
目次
豆腐のことわざ ① 豆腐も煮えれば締まる

豆腐の水分量は木綿豆腐で85%、絹ごし豆腐になると88%以上が水分で崩れやすくもろいものです。
ですが加熱すると硬くなります。加熱で凝固剤「にがり」の働きがさらに進むからだそうです。温度が上がりすぎると「す」が入って台無しになりますので湯豆腐は豆腐がふるふる踊る程度に加熱するとよいといわれます。
「豆腐も煮えれば締まる」は「も」に味があるのですね。やわらかく崩れやすいものの代表である豆腐も煮えれば硬くなる。いわんや「人間も世間の荒波に揉まれれば、一回りも二回りも大きくなってしっかりしてくるものだ」という意味ですね。
これが「豆腐は煮えれば締まる」では、事象の説明だけに終わってしまいます。「豆腐も煮えれば締まる」と副助詞一文字で言わんとする世界観が全く違ってしまいます。
さらに湯豆腐は加熱のしすぎで硬くなるとおいしくなくなります。つまり頼りないと思っていた人間が世間の荒波に揉まれているうちに、いつの間にか「煮ても焼いても食えない」人物になっていく訳ですね。何事もほどほどがよろしいようです。
豆腐のことわざ ② 納豆も豆なら豆腐も豆

納豆と豆腐、いずれも大豆の加工品です。
大豆はとても硬い食品です。この大豆の細胞の固まりは手ごわいですね。硬く結びついています。このままでは消化がよくありません。
納豆は納豆菌の酵素によってたんぱく質が分解されたもの、豆腐はつぶして加熱した豆乳に硫酸カルシウムなどの凝固材を加えて消化しやすい部分だけを固めて豆腐にしたもので、ともに消化率は向上します。
こうして作られた納豆と豆腐、まったくちがった製品ですが、もとは大豆です。この、「もとは大豆」を強調したのが「納豆も豆なら豆腐も豆」のことわざです。
豆腐の上に納豆をのせた料理を「兄弟豆腐」と呼ぶそうです。しゃれた居酒屋では「兄弟豆富」と「富」の字をあてることもあるようです。
豆腐のことわざ ③ 豆腐に鎹(かすがい)

かすがい
豆腐は舌触りが身上です。特に絹ごし豆腐は絹のようなキメがポイントです。豆腐は やわらかくて頼りないもの。それをつなぎ止めるのに「かすがい」のような金属部品を使っても効果がないことをいいます。「子はかすがい」とまったく反対の意味に使われます。
ちなみに豆腐はどんなに底面積が大きくなっても40㎝~50㎝の高さのものしか作れないそうです。水の中ではもう少し高さのあっても姿を保っていられるそうで、豆腐は水の中で扱うのが合理的なことが物理的な計算によって説明できると言うことです。
人間関係で考えると豆腐は頼りないパートナーです。
豆腐の語源は
豆腐が生まれた中国では豆腐の「腐」は「液状のものが寄り集まって、固形状になったやわらかいもの」とさします。別名で「かべ(壁)」「おかべ」「白物」「もみじ」などの呼び方があるとか。
水分を豊富に含みながら、しっかりたんぱく質の給源にもなっている豆腐は「大豆の変身」の横綱ではないでしょうか。
【まとめ】
やわらかくてもろく、頼りない豆腐の原料はとても硬い大豆です。豆腐はその大豆をゆでてすりつぶし絞ったものを固めます。豆腐が固まる仕組みは、にがりがたんぱく質の分子を引きつけて動かなくする化学変化の力を借りているのですが、そこに人生を重ねるところが「日本」ですね。
自分の身の周りの人間関係は「豆腐にかすがい」の様な、もろく不安定なものでないようにしていきたいものです。
読みいただきありがとうございました。
〈参考〉
- 全国学校給食協会:食のことわざ春夏秋冬
- 群羊社:たべもの・食育図鑑
- 小学館:食材図典Ⅱ
☆管理栄養士 すずまり が書きました。
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